ファーウェイでは、不動産業者と提携して当初からこうしたソリューションを導入した(スマート対応の)部屋を売り出すことも始めているそうです。中国、特に深センの部屋の値段は「東京と同じくとても高いのです」とLi氏。付加価値を提供することで、より高級志向での販売を狙うのだそうです。
ただ、スマートホームはまだ新しい業界で、中国市場でも広まるのには時間がかかるというのがファーウェイの考えだそうです。それでも、拡大すれば膨大な市場になると期待しているそうです。
「中国市場で最大の産業は不動産業で、その次が自動車産業です」とLi氏は指摘。この2つの市場はファーウェイにとって伸び代が大きいと判断。不動産市場に対してはスマートホームとスマートオフィスの双方を押し進め、自動車産業を含めて投資をさらに進めていく方針です。
中国市場は巨大なため、まずは中国市場からスマートホーム拡大を目指していくとのことで、その後、海外市場への進出も検討すると言います。ちなみにLi氏によれば、中国市場はこうした電子デバイスの需要は高いが、欧州ではそれほど需要が高くないといいます。そのため、まずは中国で土台を固めて、東南アジア市場から進出していきたいという考えだそうです。
ファーウェイは、売上の20%程度をR&D(研究開発)部門に投資する方針を示していますが、制裁による新規事業の開発もあって、現在は25%程度を投資し、基礎研究に加えてソフトウェアの開発などに費やしているそうです。
「制裁では、端末事業が一番ダメージを受けました」とLi氏。チップセットとGoogleエコシステムの影響が大きく、事前にストックしたチップセットは基地局などのネットワーク部門を優先したそうです。「制裁がなければ、2019年から1,000億ドルの収入を達成できたはずでしたが、それが半減しました」とLi氏はダメージの大きさを指摘します。
しかし2023年に入り、「Mate 60シリーズが復活しました」とLi氏は言います。「これは冗談ですが、我々のスマートフォンが失った市場はAppleのものになりました。しかし、他のメーカーは我々のハイエンドスマートフォン市場を奪うことができていません」。そしてLi氏は、「スマホも中国で復活していますので、失った市場を、これからどんどん取り返しに行きたいと考えてます」と強調していました。
前述の通り、Mate60シリーズは5G対応しているとみられています。具体的な詳細は今後発表される見込みですが、Li氏は「復活」という表現も用いて、制裁を回避しながら5G対応している点をほのめかしました。
ファーウェイのスマートフォン事業の今後を占う意味で、米政府の動向も含めてMate 60シリーズとさらなる製品開発に注目が集まりそうです。