ドラマパートは、制作会社・AX-ONの本職のドラマ制作チームが担当したが、クランクインの時点で手元にあった台本は、冒頭のわずか3ページのみ。「ドラマチームの人たちがずっと『これは何が始まるんだ?』と、怪訝(けげん)な顔をしていました(笑)」と、しびれる現場だった。
また、いくら上田氏の脚本の執筆スピードが速くても、出演者がドラマパートのセリフを完全に覚える時間は確保されていない。そこで、「現場にプリンターを持ち込んで、セリフを即座にプリントアウトして、カンペを作って出していました。それを見ているのを感じさせない演者さん、カメラに映らないところで出すバラエティの制作チーム、そしてすぐにカメラ割りを決める山口淳太監督と岡本充史監督、『教場』なども撮られた小松忠信カメラマンと、皆さんの技量が本当にすごいんです」といい、バラエティ・ドラマ双方の制作チームがタッグを組んでプロの技が発揮されている。
アドリブを受けて対応するのは、小道具や撮影場所の準備も同様。架空の店の名前がポロッと出ればその看板を作り、火曜の撮影で新たなロケ場所が必要になれば、水・木曜でリサーチ、金・土曜にロケハンし、次の火曜には撮影をするというサイクルで進んでいった。
撮影初日を迎えるまで、「僕も含め、みんなずっと意味が分からないまま準備していたと思います(笑)」というが、それでも「本当に誰も文句ひとつ言わずに、“こういう企画なんでしょ”と理解して対応してくれたからこそできた番組だと思います」と、チームが一丸になることで成立することができたのだ。
■用途不明の歌舞伎町シーンをひたすら撮影
ドラマシーンとアドリブシーンを繰り返す中で、劇団ひとりが新宿・歌舞伎町でロケした場面が随所に流れる。それは、演じる反田龍児の「真実にたどり着くためなら非道な捜査もいとわないアウトロー刑事」という役柄を示すためだが、さすがにこのシーンまでアドリブを受けてロケに繰り出すことはできない。
そこで、「歌舞伎町のロケは、とりあえずどこで使うか分からないけど、雰囲気作って1人で歩いたり、夜景を眺めたり、上田さんがいっぱい書いた“どこにいるんだ? 子猫ちゃん”みたいなそれっぽいセリフを読んでもらったりして、1日でまとめ撮りしました(笑)」と、とにかく映像素材を作る作戦を敢行。
「こんな意味が分からないシーン、真面目な俳優さんだったら『何言ってるんだ!?』ってなりますよね(笑)。そういう、普通は怒られるだろうなという撮り方をいっぱいしてる作品なので、そういう点も踏まえて見てもらえると楽しめると思います」と予告している。