――『仮面ライダーV3』主演を務めると決まったとき、お師匠の丹波哲郎さんからはどんな言葉がありましたか。
「丹波さん、こんど俺、仮面ライダーをやることになりました」って報告したら、丹波さんはひと言「やめとけ」と……。どうも、ずっと仮面を被って顔が見えない役だと思われたようで、「いえいえ、変身する前の役です」って説明すると「ならいいや。やれよ」と言ってくださいました(笑)。
――当初、風見志郎を演じるにあたっては長髪のカツラを着けていらっしゃったそうですね。
『仮面ライダーV3』の撮影に入る直前、僕は『女番長(スケバン)』(1973年)という映画で若いヤクザの役を演じていて、髪が短かったんです。その当時、ヒーローやアイドルは髪が長くないと……みたいなことを言われていて、最初のころだけカツラを被りました。第11話あたりから髪が伸びてきて、カツラはいらなくなりました。でも話がどこでどんな風に伝わったのかはわかりませんが、「宮内洋はカツラだ」という話を聞きつけたカツラメーカーがCM出演の依頼をしてきたことがあって……、それはもう丁重にお断りしました(笑)。
――宮内さんが『仮面ライダーV3』風見志郎を演じるにあたり、強く意識されたことは何でしょうか。
デストロン戦闘員を殴ったり、蹴ったりするアクションでの「レンズのトリック」という部分ですね。『キイハンター』にレギュラーで入ったばかりのとき、千葉真一先輩のアクションを勉強しようと思って、撮影現場を見学していたんです。そのとき千葉さんが「おいっ宮内! 見るのは構わんが、普通に立って見ていてもしょうがない。どうせ見るならカメラマンが構えているカメラのレンズの裏側から見てみろ」とおっしゃったんです。この言葉が僕にとっての、今もなお大切な宝となりました。
相手を殴る、という動作ひとつにしても、実際に当てるのではなく、カメラのレンズを通して当たったように見せる方法があるわけです。実際にはお互いの距離が1メートルくらい開いていても、殴るほう、殴られるほうの芝居がうまくシンクロすると、実際に当てるよりも迫力が増すのです。殴る側の腕がスッと伸びて、綺麗に見えます。映像的説得力を重んじるのが、映画のアクション、レンズのトリックです。
風見志郎が爆発に巻き込まれる、みたいなシーンも同じです。実際に爆発の中心に立っていたら、僕の体が吹き飛んじゃいますよね。実際には、爆発を背にしてかなり離れた位置に立ち、スイッチで爆発すると同時に風見がウワーッ!って吹っ飛ぶ芝居をすると、やられたように見えるんです。レンズのトリック、映像ではどう見えるのかを知っていると知っていないとでは、アクションの仕方がぜんぜん違ってきます。