奇抜な企画発想の背景を探るべく影響を受けたエンタメを聞くと、即答したのは、劇団「シベリア少女鉄道」。「あれを超えるものに出会ってないというくらい、めちゃめちゃ影響を受けていると思っています」と明かす。

幼少期はそれほどテレビっ子ではなかったというが、「フジテレビだと『トリビアの泉』はずっと好きで、本も全部買いましたし、テレ東さんの『ゴッドタン』もずっと見てましたし、『Peeping Life(ピーピング・ライフ)』とか、アニメ系も好きですね」という趣向。

また、くりぃむしちゅー・有田哲平とネプチューン・堀内健がタッグを組んだ『アリケン』(テレビ東京)も好きだった番組の1つ。この番組では、オープニングでディレクターが2人に企画説明するというのがパターンになっており、「人に言われて気づいたんですけど、今やってる演者さんとの打ち合わせから入るフォーマットは、『アリケン』の影響を受けているんじゃないかと、自分でも思いました」と話した。

■テレビ離れ世代がテレビ局を志望した理由

特別テレビっ子でもなく、友人にもテレビを持ってない人が多い世代であり、演劇に打ち込んできた原田氏がテレビ局を志望したのは、どんな動機だったのか。

「演劇をやっているときも、僕の中では面白いものを作っているんだという思いはあったのですが、学生がやってる極小劇団なので、ロングランでやっても500人動員したら万々歳みたいな環境の中で、やっぱりもっといろんな人に見てほしいというのが、ずっと根っこにあったんです。そんな中で、演劇を続けたかったですし、大きなメディアであるテレビもやれる放送作家になればいいんだと思って、憧れの放送作家さんに弟子入りの手紙書いたりDMを送ったり、何かきっかけを探してフジテレビでアルバイトしたりしてたんですけど、そのうちにテレビ局に就職っていうのもあるのかなと思ってきて。シベリア少女鉄道を知ったのも、佐久間(宣行)さんがやってた『ウレロ』(テレビ東京)だったということもあったので、就活でテレビ局を受けました」

各局の入社試験を受ける中で、若手を積極的に登用するフジテレビの雰囲気に惹かれたという。

「バラエティの企画コンペで優勝した『99人の壁』の千葉(悠矢)さんが当時2年目だったというのを知って、若手の企画を見ていただける会社なのかなと思ったのと、インターンで『やっちゃえよ』みたいなノリの良さや底抜けの明るさを感じたんです。実際に入ってみて、『面白そうならちょっとやってみようか』という雰囲気になる会社だと思いますね」

■テレビの発明“分かりやすく”も学びたい

SNSを中心に大きな話題を集め、業界でも注目される存在となった原田氏。今後の意気込みを聞くと、「本当に業界入ったばかりのペーペーの若手ですので、経験値も足りないですし、今回もどこまで笑いに昇華できたかというと、実は狙っていたところまでいけてない節もあったんじゃないかと反省している部分もあるんです。まだまだテレビでできる遊びもいろいろあると思いますし、いろんな番組に携わらせていただいてディレクターとしての経験値を積んで、自分の特性も何に向いてるかもまだ分かってないので、いろんなものに挑戦していけたらというところでございます」と謙虚に語る。

その上で、「“分かりやすく”というのは、テレビが長い歴史の中で積み上げてきた発明なので、ちゃんと学びたいと思いますし、そういうことだからこそできる番組も作っていきたいという思いもありますので、『ここにタイトルを入力』はこういう感じでご容赦いただければ(笑)」と呼びかけた。

6回シリーズの最終回となる16日の放送は、フットボールアワー・後藤輝基がMCを務める新感覚トークバラエティ『真夜中のおしゃべり倶楽部』と予告されているが、どんな展開が待っているのか……。

最近では、架空の国のテレビという設定で、架空の言語によって繰り広げられる番組『Raiken Nippon Hair』で「テレビ東京若手映像グランプリ2022」優勝を果たした大森時生氏(受賞時:入社3年目)など、独創的すぎる企画でSNSをザワつかせる若手制作者が頭角を現している。テレビがネットコンテンツに視聴者を奪われていると言われる中、彼らのような若いパワーで、テレビ発のコンテンツがより元気づくことを期待したい。

●原田和実
1996年生まれ、静岡県出身。横浜国立大学卒業後、20年にフジテレビジョン入社。『ネプリーグ』のADを担当しながら、特番『567↑8』『ただ今、コント中。』でディレクター。企画・演出を務める『ここにタイトルを入力』がSNSや業界内で話題を集めている。