フェイクニュース問題から「規制やむなし」の声が広がる中、World Wide Webの生みの親であるティム・バーナーズ=リー氏が提唱するセマンティックWebなど、GoogleやFacebookのような一部の企業による情報の囲い込みから、インターネットを本来の分散型のオープンネットワークへと戻そうとする動きが活発化しています。
しかし、そうしたコミュニティによる改革のスピードは速くはありません。そして、Web 3.0またはWeb3と呼び、この変化をビジネスチャンスと見る動きはすでに活発です。それを皮肉って「誰かWeb3を見たことがあるか? オレは見つけられないんだが」とツイートしたイーロン・マスク氏に、前Twitter CEOのジャック・ドーシー氏が「aからzのどこかにあるよ」とリプライしていました。「aからz」とは「a16z」で知られるベンチャーキャピタル大手のAndreessen Horowitzを指します。Web3アプリケーションに取り組むブロックチェーン・スタートアップは、結局のところ、ベンチャーキャピタルから資金を調達しており、脱・巨大テックを掲げていても、資金のある組織が力を持っていることに変わらないというわけです。
ドーシー氏やマスク氏がWeb3に期待していないわけではなく、分散化の理想が実現するにしても、それはまだかなり先だと考えているのです。現在のインターネットインフラを置き換えることを含め、ブロックチェーンが全てのユースケースをサポートできるかは不透明です。スケーリングの問題、克服すべき障害や課題が山積みであり、それを乗り越えるには多くの資金と巨大テックの力に頼らざるを得ません。
Web 2.0で揺らいだプライバシーをユーザーに取り戻すことが求められる中で、GoogleやFacebookも「プライバシー重視」の姿勢を強くアピールしています。それは望ましい変化であるものの、次代のインターネットでも巨大テックは力を発揮し続けます。だからこそ、これまでもGoogleやFacebookと対立して、ユーザーのプライバシーを守ってきたAppleの存在が重要になります。
Web 2.0の時にAJAX、CSS、OAuthといったキーワードが飛び交いましたが、そうした技術がCoreフレームワークに組み込まれ、そしてGoogleマップ、Flickr、TwitterやFacebookといったモバイル世代のアプリやサービスが誕生しました。Web 3.0でもブロックチェーンやDAO、NFTといった言葉が飛び交っていますが、そうしたテクノロジーワードが何であるかはエンドユーザーにはあまり意味のないことです。いずれフレームワークに組み込まれ、iPhone上で利用できるようになる次代のアプリやサービス、ソリューションが、エンドユーザーに変化をもたらします。