◆内蔵GPU評価その1:3DMark(グラフ86~88)

Rocket Lakeでは内蔵GPUも32EUのXeベース(X^e Graphics)になったことで、最大50%ほど性能が改善したとされるが、

  • 本当に50%アップしたか
  • アップしたとして、それは使い物になるのか

を確認しておきたいと思う。ということで、まずは3DMarkを。

  • グラフ86

  • グラフ87

さすがにこのクラスだと2Kを超えるベンチマークはやっても意味が薄いので、WildLife/NightRaid/FireStrike/TimeSpyの4つに絞っている。さて、まずOverall(グラフ86)であるが、スコアだけで見れば50%アップどころかほぼダブルスコアに近い(FireStrike)ものもある。CPU性能を除いた、純粋にGPUの性能(グラフ87)でみても、Wild LifeとかNightRaidで50%を超える伸び幅になっており、確かに性能改善は嘘でないと判る。

  • グラフ88

ちなみにCPU/Physics Test(グラフ88)も一応やってみたが、これは先ほどと似た傾向という話になった。

◆内蔵GPU評価その2:FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク Version 1.3(グラフ89~91)

FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク Version 1.3
SQUARE ENIX
http://benchmark.finalfantasyxv.com/jp/

  • グラフ89

次はこちらなのだが、予備試験で2Kでやってみたら論外な結果になったので、今回は一番負荷の軽い「1280×720pixel、軽量品質」のみである。グラフ89がそのスコアで、Rocket Lakeではやはり50%ほどの性能改善が確かに実現されている。とは言え、2300というスコアは、「重い」(「ゲームプレイは可能ですが、全体的に動作が重く感じられます。グラフィック設定や解像度の調整で改善される可能性があります。」)という判定である。一応Core i9-10900Kの1523は「動作困難」(「動作に必要な性能を満たしていません。」)という判定だから、それよりは改善である。

  • グラフ90

  • グラフ91

OCATを噛まして取得した平均/最大/最小フレームレートがグラフ90だが、最大で32fpsに行くかどうかというのはかなり厳しい。グラフ91が実際のフレームレート変動だが、20fpsあたりが現実的に期待できるフレームレートで、このまま快適にプレイするというのは難しいだろう。

◆内蔵GPU評価その3:Metro Exodus(グラフ92~97)

Metro Exodus
4A Games
https://www.metrothegame.com/

  • グラフ92

  • グラフ93

  • グラフ94

もう一つ、MetroもLowプリセットで、かつ解像度を下げて実施してみた。平均/最大/最小フレームレートがグラフ92~94であるが、FF15に比べればこちらの方が希望がある。ただそれでもどうにかプレイできそうなのは1600×900pixelあたりで、2Kは困難といったところ。

  • グラフ95

  • グラフ96

  • グラフ97

実際フレームレート変動を見ると、1280×720pixel(グラフ95)など50fps近いスコアが出ていて、「行けるか」と思うと80~90secあたりが20fps切りで、これは結構しんどい。1600×900pixel(グラフ96)も同じである。2K(グラフ97)は、かなり厳しいことになるだろう(80秒あたりは15fpsそこそこしかない)。

考察

ということで駆け足でRocket LakeベースのCore i5-11600K及びCore i9-11900Kの性能を確認してみた。筆者の見解は以下のようなものになる。

  • 絶対性能そのもので言えば、確かにComet Lake世代から確実に向上しており、Ryzen 5000シリーズと比べても上回るか、すくなくとも同等レベルの性能を確実に有している事は確認できた。
  • その一方で消費電力の多さが目立つ。これが半年前なら能天気に「今年の冬は寒いから大丈夫」とか評したかもしれないが、これから暖かくなる時期にこの消費電力はかなり辛い。まずは240mm幅、出来れば360mm幅のラジエターを持つ水冷クーラーが欲しくなるが、これをミドルタワーに納めてかつ効率よく冷却する工夫が要りそうだ。
  • 内蔵GPUは確かに性能が向上しているが、実用性で言えばそれなりにゲームを選ぶ。昔の軽いゲームならプレイできるだろうが、少なくとも競合であるRyzen Gシリーズにはまだ及ばない。というかこのSKUならそもそも内蔵GPUは要らない気がするので、まぁDiscrete Graphicsを組み合わせる事をお勧めする。
  • 今回はRyzen 7 5800X(発表時の価格は$449。現在の市場価格は\56,629)及びRyzen 5 5600X(発表時の価格は$299。現在の市場価格は\48,120)と比較したが、参考価格をもとにコストパフォーマンスの面でCore i9-11900K($539、あるいは$519のCore i9-11900KFでも可)及びCore i5-11600K($262、あるいは$237のCore i5-11600KFでも可)とどちらが優れているかを考えた場合、Ryzen系に軍杯が上がる。性能差はわずかだし、主戦場であるGaming向けという観点で言えばベンチマークで示したようにあまり性能差がない。それでいて消費電力には差がある。Ryzen 5000系も以前のRyzen 3000系に比べると大分消費電力が増えたとは思うのだが、Rocket Lakeではこれだけ消費電力が増えれば、マザーボードもそれなりに電力供給を充実させざるをえないし、すると総コストが上がるのはやむを得ない。CPUクーラーも、Ryzen 7 5800Xは空冷でも行ける(筆者はWraith Prismを組み合わせて使えている)が、Core i5-11600Kは120mmラジエターの水冷クーラー、Core i9-11900Kは240mm以上が欲しいという感触なので、その分のコストも必要だろう。AMDのX570マザーボードの価格が大分こなれてきた事も、Rocket Lakeには厳しい。さらに言えば次のAlder Lakeでは恐らくSocketごと変わるため、つまり今Intel 500シリーズマザーを購入しても、次に使う事は出来ないと見られる。諸々を考え合わせると、絶対性能よりコストパフォーマンスを気にするならRocket Lakeは選びづらい。

Intelからすれば、なんとか性能でCatchupして追い越したいというのが至上命題だったのは理解できるし、実際に性能も上がった。そのためにはギリギリまで電力を使うしか無かったのも判る。判るのだが、例え上位寄りのモデルであったとしても、やはりもう少し扱いやすさがあれば、とは強く思うところである。