VAIO Zは、トップビジネスアスリートが使うPCとして、それに相応しい使い勝手の追求が行われている。その追求のなかで、特筆される取り組みのひとつが、キーボードを一から作り上げたことである。
武井メカニカルリーダーは、「VAIO Zのキーボードに対する打鍵クオリティには高い評価があった。だが、新たなVAIO Zを開発するのにあわせて、社内外の声を改めて聞いた。その声をもとに、すべてを見直し、ストロークやディッシュ形状、バックライト構造なども作り直すことにした」と語る。
キーのストロークを深め、押し心地を改善
新たなVAIO Zのキーボードでは、これまで1.2mmだったキーストロークを1.5mmに深くし、ストロークの安定性と作動力を見直したほか、キートップにより深いディッシュ(皿)形状を設け、打鍵したときに指が自然とキーの真ん中に行くような形状にした。また、パンタグラフ(構造)の材料も見直すことで、キーの剛性感を高め、打った時の振動を減らし、打鍵時の静音性も確保。その結果、打ち心地に高級感を感じられたという。
「キーの荷重は、従来よりも5g重くした。よりシャープな押し心地で、キーの跳ね返りも強くなっている。指を置いた瞬間から打ち抜くまで、手先に吸いつくかのような心地よい打鍵を目指した。キーボードは自信があるものに仕上がっている。使ってもらうとかなり印象が違うことを感じてもらえる」と、武井メカニカルリーダーは胸を張る。
今後、VAIOのキーストロークは、1.5mmのキーボードが標準になっていくという。
なお、キーボードのバックライト構造も見直しており、光むらがなく、より美しく光るようにしている。また、隠し刻印キートップを改良し、印字部分は、光を透過するようにデザインするといった細かいこだわりもみせている。
リモートワークの広がりにも対応
コロナ禍でリモートワークが広がるなか、Web会議の利用を見越して、マイクやスピーカーの強化も図っている。
板倉功周エレクトリカルリーダーは、「リモートワークの増加に伴い、マイクやスピーカーの音質に対する要望が増えている。新たなVAIO Zでは、すべてのパフォーマンスを向上させたいと考え、マイクやスピーカーの性能改善も重視した」とする。
内蔵マイクは、機構を見直すとともに、マイク用のクッション材料を見直し、制振性の高いゴムを使用して密閉度を向上。密閉度が上がったことにより、キーボードの打鍵音が筐体内を伝わってマイクで拾うことを低減したり、ビームフォーミングの指向性向上により、周囲のノイズを抑制する性能がアップしたりといった効果が生まれている。
また、約207万画素の高性能フロントカメラの搭載のほか、独自に最適化したDolby Audioによって、音声だけを聞き取りやすくするエフェクト機能の採用、集合会議で便利な大型スピーカーユニットの搭載、プライバシーに配慮したカメラシャッターとマイクミュートショートカット機能の搭載など、Web会議のクオリティを高めるための工夫が凝らされている。
VAIO User Sensingがもたらす新たなメリット
VAIO Zで新たに搭載されたのが、VAIO User Sensingである。
VAIO User Sensingは、人感センサーと、顔認証および指紋認証の2つの生体認証と組み合わせることで、VAIO Zがユーザーを認識するものだ。PCの前に座るだけでスリープから復帰したり、ログオンしたりする「着席オートログオン」や、PCの前から離れると自動でロックする「離席オートロック」などの機能を提供する。
VAIO PC事業本部エンジニアリング統括部システムソフト課の古谷和之ソフトウェア リーダーは、「センシング技術と生体認証技術を組み合わせて、使いやすさと信頼性を両立しながら、新たな体験を提供する機能がVAIO User Sensing。リモートワークをする人が急増するなかで、セキュリティがより重視されているが、パスワード入力や複雑なパスワードを覚えるのは不便という声もある。そうした課題を、人感センサーと認証技術で解消し、同時に信頼性も実現することができる」と説明する。
PCの起動自体を抑制するBIOS起動時認証では、ワンアクションログオンに対応したり、1度電源ボタンを押すだけで、起動時認証とWindowsログオンの両方を実行できるといった機能も提供する。
「開発当初は顔認証の方が使い勝手がいいと思っていたが、コロナ禍でマスクを使う人が増え、認証するたびに外さなくてはならないという課題が生まれてきた。そこで、指紋認証も活用することで、ユーザーのシチュエーションにあわせて選択できるよう開発中に変更した。今後のVAIOシリーズでも、人感センサーと認証技術を活用していくことになる」(古谷ソフトウェアリーダー)
VAIO User Sensingは、コロナ禍での新たな環境でもメリットを生む機能だといえる。
180度開くようになったディスプレイ
そのほかにも、VAIO Zならではの使い勝手へのこだわりがある。Type-Cコネクターは、本体両側面に搭載。ポートの位置に影響を受けない給電を可能にしている。
「筐体の両側にType-Cコネクターをレイアウトすることは設計難易度を高めることになる。とくに、VAIO Zでは、デュアルファンの採用などによって、同一基板上にはレイアウトできず、片方はハーネスで接続している。インピーダンスのずれや制御などが難しいが、インテルとの協業もあり実現できた」(板倉エレクトリカルリーダー)
また、新たなVAIO Zでは、180度のディスプレイ開閉を可能にしている。
「膝の上で使うときや、テーブルで相手に画面を見せたいときなど、自由度の高い液晶ディスプレイは使い勝手を高めることができる。VAIOの特徴であるチルトアップ構造を保ったまま、180度の開閉を実現するために、ヒンジの軌道設計を新しく見直した。また、反対側の相手に画面を共有することを想定して、画面とタッチパッドを同時に反転させるショートカットボタンも用意した。新たな世代のVAIO Zが実現する使い勝手のひとつとして、180度開閉を実現することは、利用シーンの広がりにつながると考えた」(武井メカニカルリーダー)
さらに、オプションとして、Type-C 4Kマルチモニタードッキングステーションを新開発した。Type-Cケーブル1本で、4K60Hzモニター2台を接続でき、VAIO Z本体の4K表示とともに、「トリプル4K」という広大な作業領域を実現することもできる。
古川プロジェクトリーダーは、「自宅やオフィスに戻ってきたときに、ケーブル1本でつなげるだけで、快適な作業環境ができる。VAIO Z購入者の3割以上の人に使ってほしいオプション」と話す。
VAIO Zはユーザーの挑戦にも火をともす
VAIOは、2020年11月にブランドミッションの再定義を行い、「挑戦に火をともそう」という言葉を掲げた。
古川プロジェクトリーダーは、「VAIOは、挑戦をしていく企業であることはこれからも変わらない。今回のVAIO Zでも多くの挑戦を行った。そして、VAIO自身の挑戦を示すことで、VAIOを利用する人たちの挑戦に火をともせる存在になりたいと考えている。ユーザーの挑戦心に火をともすことができる究極のマシンがVAIO Z。挑戦の相棒として使ってほしい」とする。
VAIOは、同社のPCが目指す姿として、「挑戦の友として、心強く、ワクワクして、感動できて、絆を感じ、信じられ、刺激を受け、時にライバルとして切磋琢磨する、相棒」を掲げている。
VAIO Zは、それを真っ先に具現化するPCでもある。
開発の初期段階で、ホワイトボードに貼りだした付箋紙のなかに、目指すVAIO Zの姿として、「艶っぽい」(つやっぽい)という言葉があったという。
これは、PCのスペックや使い勝手、デザインなどのすべてが盛り込まれて、初めて実現する要素といえるかもしれない。
「使っていて気分があがるというのも、過去のVAIO Zが実現してきたこと。こうしたことも含めて、これまで以上に惚れてもらうことができ、艶っぽい新たなVAIO Zが誕生したと思っている」と古川プロジェクトリーダーは語る。
VAIO Zの新たな歴史が始まった。