こんな時代だからこそ、"笑えるもの"を作りたい

――最初にご自分が手掛けた作品が発売されたときはいかがでしたか?

菅谷:初めて作品が発売されたときは、渋谷のタワーレコードにビルボードで一面大きく展開されたんです。まだ携帯がなかったから、カメラで写真を撮りに行きました。今も行けるときはお店に見に行ってます。僕は音楽ファンとして、買う側の気持ちに近いんですよ。だから、例えば僕はこのとき(『Do!! The★MUSTANG』)ピンクが一番映えると思って作ったので、実際に店頭に並んだときに一番目立ってるかどうかを確認しに行くんです。それが一番大きいかもしれないです。

  • アトリエでの仕事風景。映画『エポックのアトリエ 菅谷晋一がつくるレコードジャケット』より

――制作過程を見ていたら、「ものを作る」ということへの執着がすごいというか、ここまでやるのかっていう感じを受けました。だけど、仕事に没頭している姿が、まるで図工を楽しんでいるようにも見えて、そのギャップみたいなところがすごく面白かったです。

菅谷:ありがとうございます(笑)。僕ね、図工っていう表現がすごく嬉しくて。本当に、この机を買ったときも、「図工室みたいな机ないですか? 」って言ったので。椅子もベンチになっちゃってるけど、本当は図工室にあるような正方形の座面の椅子が欲しかったぐらいで。おっしゃるようにギャップはあるかもしれないですけど、確かに自分の中ではとことん作り詰めてはいますね。

  • アトリエでの仕事風景。映画『エポックのアトリエ 菅谷晋一がつくるレコードジャケット』より

――レコードジャケットの依頼ではなくて、菅谷さんご自身が今作ってみたいというものってありますか?

菅谷:何か大きいものを作ってみたいですね。でも、それを作るときも、何かしらの音楽を聴いて発想すると思うので、あんまり境目はないかな。結局、音楽は常に隣にあるので。

――最後に、マイナビニュースをご覧の若い世代のビジネスマンに仕事のアドバイスをいただくとすればどんなことでしょうか。

菅谷:今、やっぱり辛いことが多いじゃないですか? だから、笑っていきたいなって。僕、自分が作品ができたときに、笑っちゃうんですよ。笑ったのがゴールだなって思うんですよね。これ(『Do!! The★MUSTANG』)ができたときも、「バカだなあ、すげえ顔だなあ」って(笑)。そこを切り取れたのも、ゴールだと思うし、それを見て自分が笑えたのもゴールだと思うんですよ。僕と作り方は一緒じゃないかもしれないけど、こういう時代だからこそ、1つの作品を見ていっぱい笑えたらいいよねって。そういう仕事ばかりじゃないと思うけど、料理を食べて美味しかったら笑顔になるし、そういう時間が大事なのかなって思います。みんなで、笑えるものを作りましょう(笑)。

  • 『エポックのアトリエ 菅谷晋一がつくるレコードジャケット』

『エポックのアトリエ 菅谷晋一がつくるレコードジャケット』予告編

●Information
『エポックのアトリエ 菅谷晋一がつくるレコードジャケット』
2021年1月8日(金)より新宿シネマカリテほかにて劇場公開
出演:菅谷晋一、ザ・クロマニヨンズ<甲本ヒロト、真島昌利、小林勝、桐田勝治>、 OKAMOTO'S<オカモトショウ、オカモトコウキ、ハマ・オカモト、オカモトレイジ>、 青柳拓次、VLADO DZIHAN、DJツネ、佐藤有紀、石川明宏、森内淳、信藤三雄、佐々木進 プロデューサー・監督・編集:南部充俊
撮影:千葉真一(J.S.C)
音楽:青柳拓次
エンディング曲:青柳拓次 featuring 真島昌利
協力プロデューサー:汐田海平、戸山剛
制作プロダクション:エイゾーラボ
2020年|日本|カラー|ステレオ|16:9|DCP|96分
配給:SPACE SHOWER FILMS
(C)2020「エポックのアトリエ」製作委員会