UH-X/E3に隠れた『攻め』と『守り』

富士通クライアントコンピューティングの河野マネージャーは、「今回のLIFEBOOK UH-X/E3は、妥協のない使いやすさと、持ち運びやすさを追求するために、『攻め』と『守り』の両面からアプローチした」と語る。

「攻め」とは、これまでの世界最軽量を達成した実績を、自ら超えていくことを指す。そして、「守り」とは、これまでの最軽量モデルでも実現してきたように、ビジネスシーンでの利用などにおいて、欠かせない機能や性能を維持するといった、いわば「譲れないもの」を指す。

「攻め」においては、大きく3つのポイントがある。

ひとつめは、大前提となる、さらなる軽量化だ。先に触れた100以上の項目をあげた「軽量化ネタ」では、そのうちの約6割が「ムサシ」の実現に採用されたという。

たとえば、USB Type-Cのコネクタを固定する際の補強用板金の中央部に穴をあけたり、ファン固定用スタッドは、円柱だったものを、角をそぎ落として三角柱のものにしたりといった工夫があげられる。いずれも0.5g以下の軽量化だが、こうした積み重ねが随所で行われている。

  • UH-X/E3の内部

  • UH-X/E3(左)と従来モデルのUH-X/C3(右)の内部。バッテリーを支えるパーツを短くしたほか、基板とバッテリーの接続も直付けのコネクタからより軽いケーブル接続へ変更された

河野氏は、「毎回、様々な要素を絞りに絞って軽量化している。もはや、一気に軽量化に貢献できる要素はなくなってきており、従来以上に細かいところまで踏み込んでいかないと軽量化が進まない」と苦笑するが、これだけ多くの項目をあげ、それを実行に移していることには驚く。

ちなみに、最軽量モデルには、ビクトブラックカラーしか用意されていないが、これも、長時間駆動モデルであるUH90/E3などで採用しているガーネットレッドにすると、塗装回数が多く、10gほど増加してしまうことが背景にある。そこまで追い込んだうえでの世界最軽量なのだ。

「設計データ上では目標値を達成していても、作り込んでいくと、少しずつ重量が増えていく。軽量化のために、そこから少しずつ削り取っていくということの繰り返しだった」(河野氏)という。

天板は新たにカーボン、金属より軽く堅牢

だが、一部には、軽量化とのトレードオフでコストが高くなるものがある。三角柱のスタッドもそのひとつだ。「三角柱のスタッドは専用で用意したものであり、コストはあがる。だが、許される範囲のコスト上昇に留めるという努力は怠らなかった。その一方で、素材を変えてコストダウンできるものがあれば積極的に取り組んだ。レノボグループとしての調達力も生かした」とする。

今回の軽量化において、最大の効果は、天板をカーボン素材にしたことだ。これまで天板には軽量化に効果があるマグネシウムリチウムを採用していたが、カーボンはそれを上回る軽量化が可能になる。

  • カーボン素材になった天板。天板だけを手に持つとあまりの軽さに驚く

「カーボン素材は軽量化と剛性アップという点で大きな効果があるものの、コストが高いという課題があった。だが、レノボグループとしての調達力を生かすことで、コストダウンを実現。今回のUH-Xに採用することができた」(松下氏)。

こうした努力の結果、UH-X/E3の市場想定価格は220,000円前後を実現。従来モデルと同等水準に収めている。

フットプリントは8%の小型化に成功

攻めの2つめは、本体のコンパクト化だ。ここでは、有線LANコネクタを小型化したり、DC INの電源ポートを無くし、充電機能をType-Cに集約したりといった工夫がなされた。加えて各所で部品寸法やクリアランスの見直し、さらにはディスプレイを狭額縁化することで、奥行きを15mm短くするとともに、幅を2mm短くしてフットプリントで8%のコンパクト化に成功している。

  • UH-X/E3(上)と従来モデル・UH-X/C3(下)。フットプリントでは8%のコンパクト化に成功

狭額縁化においては、ディスプレイ上部に搭載される内蔵カメラと無線LANアンテナのユニットを一から見直し、極限までコンパクト化。さらに、内部レイアウトも大幅に見直し、メインボードを壁際のギリギリの位置に移動。また、最も多くの場所を取るバッテリーの構造や位置を変更。これもコンパクト化に貢献している。

「最後まで苦労したのがスピーカーの位置。左右に距離を取った配置ができなかったが、ソフトウェアによって、音の広がりを実現することに成功している」(河野氏)。

  • スピーカーの位置は左右に距離を取った配置ができず、本体前面に並ぶ形となった

なお、メーカー直販のWEB MARTでは、無線WAN対応モデルが用意されているが、無線WANのアンテナは、ベースユニット側に配置しながらも、アンテナ性能を落とさない工夫をしている。

「64gの軽量化のうち、筐体で50%、狭額縁化で20%、液晶ディスプレイやバッテリー、キーボードといったユニット関連で25%、その他で5%を軽量化」(河野氏)。特にコンパクト化は、持ち運びやすさとともに、日本の狭い家屋において、少しでも小さいフットプリントで使ってもらうための挑戦でもあった。

  • UH-X/E3における軽量化の内訳。多少の軽量化ではインパクトが薄いため、最低でも50gは軽くしたかったという

河野氏は、「10g、20gの軽量化ではインパクトがないというのはわかっていた。従来モデルで50gの軽量化によって、大きな反響があった。そこで最低でも50gの削減は目標にした」と語る。しかし、“軽くするだけでは意味がない”ことも社内の共通認識であり、実用面を意識してコンパクト化の要素は最初から盛り込んだとした。「コンパクト化という点では、最初から目標にしたサイズを達成することができた」とする。