質疑応答ではこんな話題も!
トークセッションの最後には質疑応答の時間も設けられた。興味深かったやりとりをいくつかご紹介しよう。
―― 竹内さんが最初に「ケースが厚い」とダメ出しをされたPRW-1000より、現行のPRX-8000のほうが実はケースが厚いのですが、後者のほうが高く評価されている。その評価の整合性について教えてください。
竹内氏:単純に厚さだけではなく、この縁(へり)のデザインがすごく重要だと思うんです。PRW-1000は、ここ(縁の形状)にとにかく物が引っかかって、これが良くなかった。あとボタンが押しにくかったですね。ですから、厚さについてはおっしゃる通りなんですが、側面の処理がきれいになったこと、ラグからバンドにかけての一体感が出たことで、引っかかりがほぼなくなりました。数値的なスペックだけではなく、デザインや機能性が実際のフィールドでの使いやすさに直結するということですね。
―― 近年、アウトドアウオッチの中でもGNSS(Global Navigation Satellite System / 全球測位衛星システム)を使って現在位置を測位することで標高を示すモデルが増えていますが、PRO TREKはすべて小型センサーを使って標高などを測位していますね。その理由を教えてください。
小島氏:GPS測位とそれに対して補正する形でのアプローチについても、展開を図ろうとしているところです。ただ、竹内さんが使われるような極限の状況においてより確実に機能するという点では、やはり現在のトリプルセンサーVer.3が非常に有効と考えております。したがって、それを軸にどこまで機能や性能を広げられるか、つまりこの技術のブレイクスルーを見つめながら、まずは商品化していきたいと考えております。もちろん、登山の目的や状況によっても変わってくると思いますが、まずは安心して選んでいただけるPRO TREKブランドのものづくりをこれからも続けていきたいと思います。
そして、小島氏は次のようにトークセッションを締めくくった。
小島氏:PRO TREKの25年を振り返ってみると、やはり竹内さんのご協力を得られたことがPRO TREKに大きな飛躍を与えてくださったと考えています。今後も竹内さんをはじめ、プロ登山家の方々の意見を採り入れた本物のツールをしっかりと作り続けていきたいと考えております。
と、本来ならここで筆を置きたいところだが、最後にもうひとつだけ、竹内氏のトークの中で心に残るお話があったので書き記しておきたい。
竹内氏:日本とネパールの時差は3時間15分なので、アナログ時計の場合は、日本時間表示のまま90度傾けることでネパールの時刻が分かるんですね。これはアナログ時計だからこそできる。と同時に、日本とネパールだからこそできるんです。私は、こんなところにも日本とネパールの不思議な絆を感じるんですよ。
ネパールの8,000m級14座の完全登頂を果たした竹内氏の熱意あふれる監修とともに、名峰マナスルの名を頂点に抱くPRO TREK。私たちの左腕で時間と道を指し示すこの時計もまた、2国間の、そして山を愛する人々をつなぐ架け橋なのだと、そう強く感じた今回のトークセッションだった。PRO TREKの30周年へ向けてさらなる飛躍に期待したい。
(社内写真提供:カシオ計算機)