既報の通り、9月24日にGeForce RTX 3090の販売が解禁になったものの、当日の在庫はほぼ「蒸発」。その後各社からの製品も出揃ったものの、やはり在庫は少ない様で、欲しいユーザーが即購入できる、という状況にはなっていない。
そのGeForce RTX 3090であるが、レビューがこんなに遅れたのは一重に我々も機材の入手に難儀したからである。幸か不幸か、まだ製品を手にしていないユーザーの方が多いと思われるので、多少スローモーではあるが、レビューにも意味はあるだろう。
テスト環境、バイパスコンデンサは要確認か
ということで、では今回のテスト環境をご紹介したい。今回利用したのはASUSの「ROG-STRIX-RTX3090-O24G-GAMING」である(Photo01~13)。実はこの製品、日本語の製品紹介URLこそ既に公開されているものの、現時点では発売日及び価格が未定となっている。ASUSはTUF-RTX3090-24G-GAMINGを先行投入しており、このROG-STRIX-RTX3090-O24G-GAMINGの方は後追いでの市場投入になる模様だ。ちなみにカード寸法は320mm×130mm×61mm、重量は1799.8g(いずれも実測値)だった。
追記:記事で試用した「ROG-STRIX-RTX3090-O24G-GAMING」の国内販売が決定。
製品名 ROG-STRIX-RTX3090-O24G-GAMING
発売日 10月30日
価格 オープンプライス(市場想定価格は税別232,000円前後)
<参考記事>
ASUS、ROG StrixシリーズからOCモデルのNVIDIA GeForce RTX 3090搭載カード
なおROG-STRIX-RTX3090-O24G-GAMINGには4inch少々のミニ定規(Photo14)が付属していた。そのミニ定規、裏面(Photo15)にはなぞの座標が記されている。なんとなく想像はつくが、一応確認してみたら予想通りだった(Photo16)。
ところで海外の報道によれば、いくつかのベンダー(EVGA、Galax、それと恐らくZotac)のGeForce RTX 3090カードが高負荷になるとリセットが掛かったり、動作がおかしくなるといった振る舞いをしたらしい。主な理由として挙げられているのは、チップの裏に積層されているパスコン(バイパスコンデンサ)の種類が関係しているらしい。Founder Editionの場合はカバーが掛けられているので裏面を見る事が出来ないが、どうもそもそものReference DesignではMLCC(Multi-Layer Ceramic Capacitor:積層セラミックコンデンサ)を利用することになっており、ところが一部のメーカーではこれをPOSCAP(パナソニックの導電性高分子タンタル固体電解コンデンサ)や、SP-CAP(パナソニックの導電性高分子アルミ電解コンデンサ)などに置き換えて実装を行ったが、恐らくこれらだと普段はいいが、急に負荷が増えた時などに十分な電力を供給しきれなかったようだ。Photo04,05で判る様に、今回試したROG STRIXではこの問題にはあたらなかったようである。
GPU-ZではきちんとGeForce RTX 3090と認識された(Photo17)。Boost Clockが高めのせいか、Pixel FillrateとかTexture FillrateがGeForce RTX 3090 Founders Edition(それぞれ189.8GPixel/s、556.0GTexel/s)より高めになっているが、これはGPU Clockに比例しているだけである。ただ、そうなるとTBP(Thermal Board Power)はどう設定されているのか気になるところだが、BIOSの中身を見るとデフォルト390W/最大480W(!)である(Photo18)。つくづく、テスト期間の外気温が低めでエアコンの稼働率が下がってて良かった、と思った。余談だが、今回ROG-STRIX-RTX3090-O24G-GAMINGのテスト中は、一度も不安定になったりリセットが掛かったりしなかった。要するに、前回の3080のテストの時は外気温が高すぎた、という話である。
表1にテスト環境を示す。基本的には3080のテストのそのままである。ドライバに関しては9月24日の発売に合わせて、NVIDIAよりGeForce RTX 3000シリーズをサポートしたGeForce Driver 456.38 DCHがリリースされており、これを利用している。
■表1 | ||||
---|---|---|---|---|
CPU | Ryzen 9 3900X | |||
Motherboard | ASUS TUF Gaming X570-PLUS | |||
BIOS | Version 2607 | |||
Memory | CFD W4U3200CM-16G×2 (DDR4-3200 CL22) | |||
Video | GeForce RTX 2080 Super Founder Edition GeForce RTX 2080 Ti Founder Edition |
GeForce RTX 3080 Founder Edition | ASUS ROG-STRIX-RTX3090-O24G-GAMING | Radeon RX 5700 XT Reference |
Driver | GeForce Driver 452.06 DCH WHQL | GeForce Driver 456.16 DCH | GeForce Driver 456.38 DCH | Radeon Software 20.8.2 |
Storage | Intel SSD 660p 512GB(M.2/PCIe 3.0 x4) (Boot) WD WD20EARS 2TB(SATA 3.0)(Data) |
|||
OS | Windows 10 Pro 日本語版 Version 2004 Build 19041.450 |
このドライバに関して言えば、9月末に上で触れた「一部カードが動作しない」問題に対応して安定性を増したGeForce Driver 456.55 DCHもリリースされたが、今回は456.38のままで問題が無かった。また、ゲームが動かない等の問題も、1つを除き特になかった(これは後述する)。
今回のテスト結果は前回の3080の結果に、3090のものを足しただけである。このため、テストの手順などは前回の3080のものと完全に同一にしているため、今回は説明は割愛する。ちなみにグラフ中の表記は
2080 Super:GeForce RTX 2080 Super Founder Edition
2080 Ti :GeForce RTX 2080 Ti Founder Edition
3080 :GeForce RTX 3080 Founder Edition
3090 :ROG-STRIX-RTX3090-O24G-GAMING
5700XT :Radeon RX 5700XT Reference
となる。また一部のテストではRT(Ray Tracing)On/Offの両方が混在している。ここでRTを有効にしたものは
2080 Super RT:GeForce RTX 2080 Super Founder Edition RTX On
2080 Ti RT :GeForce RTX 2080 Ti Founder Edition RTX On
3080 RT :GeForce RTX 3080 Founder Edition RTX On
3090 RT :ROG-STRIX-RTX3090-O24G-GAMING RTX On
となっている。また解像度表記は
2K:1920×1080pixel
2.5K:2560×1440pixel
3K:3200×1800pixel
4K:3840×2160pixel
とさせていただく。
◆3DMark v2.12.6949(グラフ1~6)
3DMark v2.12.6949
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/3dmark
9月18日にVersion 2.13.7009がリリースされたが、今回はデータ互換性を保つためまだVersion 2.12.6949を利用している。
ということでまずはOverall(グラフ1)。NightRaidに関しては、もう完全にCPUがボトルネックになっている感じがする。SkyDiver以降はそういう事もなく、きちんとフルの性能が出ている感じ。3090のスコアは3080の5%~10%アップといったあたりになっている。
もう少しダイレクトにフレームレートが反映されるGraphics Test(グラフ2)の結果で言うと、やはりNightRaidはCPUがボトルネックになっている感じ。一方それ以外についてはもう御覧の様に、明確にスコアが伸びているのが判る。かなり重いTimeSpy Extremeですら10000超えだから、その性能は圧倒的である。
Physics/CPU Test(グラフ3)を見る限り、CPU負荷そのものは別に他と大差なし。ただCombined Test(グラフ4)ではFire Strike Ultraを除くと大差ないというかむしろパッとしない性能になっているのは、GPU性能が高すぎでCPUがボトルネックになっており、Combined Testの環境ではむしろPhysicsの動作の妨げになっているのではないか? という気もする。
DLSS Test(グラフ5)はまぁセオリー通りできっちり性能が伸びているが、DLSS Offでも60fps近くを実現できるのならDLSSなしでもいいのでは? と思ったりもする。PCI Express Test(グラフ6)では、きっちり32GB/secの帯域に対応していることが確認できた。
ということで総じて3090は想定通りの性能が出ている様に思われる。
◆Basemark GPU 1.2(グラフ7~12)
Basemark GPU 1.2
Basemark
https://www.basemark.com/products/basemark-gpu/
DirectX(グラフ7)とVulkan(グラフ9)の結果は納得できるというか、まぁ想定した通りの結果であるのだが、OpenGL(グラフ8)のAvgを見ると妙に結果が圧縮されているというか頭打ち傾向である。なので確認のためにフレームレート変動も見る事にした。ちなみにBasemark GPUの場合はGame Benchmarkの場合と異なり、実行に要する時間が変化する。というのは2848フレーム分を間引きなくの描画するためで、だから284.8fpsで表示できるなら10秒、28.48fpsで表示できるなら100秒掛かる仕組みである。なので横軸は時間ではなくフレーム数となっている。
ということでグラフ7がDirectX 12、グラフ8がOpenGL、グラフ9がVulkanでの表示だが、全般的にGeForce RTX 3090だとフレームレート変動が激しくなる傾向にある。それでもまだDirectX 12とVulkanではビデオカード毎にグラフが完全に分離しているので、ちゃんと性能が出ている事が判るが、問題はOpenGLである。GeForce RTX 3080とGeForce RTX 3090はほぼ重なる感じになっており、しかも300フレーム~1000フレーム前後とか1700~200フレームの間とかはGeForce RTX 2080 Tiのグラフまで重なっている格好である。これはおそらくであるが、OpenGLのドライバに問題がありそうだ。
そもそもNVIDIAもAMDも、OpenGLに関してはプロ向け(QuadroとかRadeon Pro)はきちんとサポートする一方、コンシューマ向けは「一応動く」という程度であまり真面目に実装は行っていない。その結果がモロに出てきたという感じだろうか。まぁ昨今ではゲームでOpenGLを使うケースはまず存在しないから、別に支障はないのだろうが。
◆SuperPosition v1.1(グラフ13~19)
SuperPosition v1.1
Unigine
https://benchmark.unigine.com/superposition
平均(グラフ13)・最大(グラフ14)・最小(グラフ15)を見ると、平均/最大でGeForce RTX 3090は綺麗にグラフが分離しており、特に2Kだと平均180fpsというのはGeForce RTX 2080 Superの5割増以上のフレームレートである。その一方で最小では2KでGeForce RTX 3080と重なっているあたり、やはりCPUボトルネックがありそうだ。
ということでフレームレート変動を見てみると、2K(グラフ16)90秒~110秒あたりは明確にCPUボトルネックが発生している事が見て取れる。ここがもう少し性能が上がれば、GeForce RTX 2080 Superの倍近いフレームレートも期待できそうだ(事実80秒あたりまではほぼ倍のフレームレートになっている)。
2.5K(グラフ17)~4K(グラフ19)までは綺麗にグラフが分離しており、4KですらGeForce RTX 3080に10fps以上の上乗せがあるのは流石と言うべき。逆に言えば、2.5K以上の解像度で使わないとその真価は発揮できない、ということになる。