考察 - 「実に優秀」だが、いつまで買える?
ということでざっとテストを行ってみた結果だが、「実に優秀」としか言いようがない。強いて言えば
- 内蔵GPUは優秀だが、1080Pでのゲームをプレイするには未だ力不足。ゲームを楽しむならDiscrete Graphicsは必須
- Memory Accessを多用するようなアプリケーションではやはりRyzen 3000Xに一歩及ばない
- 最大でも8コア
- PCI ExpressがGen 3接続
といった弱点はあるが、これで困るユーザーはごく一握りだと思う。実際のところ、Ryzen 5 Pro 4650Gをベースにまず使い、もう少しゲーム性能が欲しいと思った時に後追いでDiscrete GPUカードを追加する、というシナリオが一番リーズナブルではないかと思う。おまけに、恐ろしく省電力でもある。今年も猛暑がやっと到来したが、この程度の消費電力ならばクーラーの効きに神経質になることなく、安心してプレイできるだろう。
ところで今回AMDは、「リテールパッケージのRyzen 4000Gシリーズ」を出す予定がない「らしい」。理由はなんとなくわかる。こと8コア以下のマーケットであれば、既存のRyzen 3000XシリーズとかRyzen 3000シリーズよりも性能も良く、消費電力も少なく、総じて申し分ない製品であり、これが広くリテールパッケージで売られたら、それこそRyzen 7 3700XとかRyzen 5 3600Xの売れ行きに影響しそうである。
ところが作る側からするとそれは困ったことになる。そもそもRenoirのダイは156平方mmとかなり大きめで、Ryzen 3000シリーズことMatisseの74平方mmよりも相当原価が高い。勿論Matisseの場合は、これとは別に12nmプロセスで作るI/O Die(これが125平方mmほど)が必要だから、どっちもどっちという話はあるのだが、EPYCとかThreadripperにも使えるMatisse向けと異なり、Renoirは他の用途が無い。
AMDとしては、MobileあるいはOEM向けマーケットにRenoirを積極投入することにはやぶさかではないが、Matisseでカバーできるところは出来るだけMatisseでカバーしたい(RenoirがMatisseを駆逐するような羽目に陥りたくない)、という事だろう。まぁその結果としてOEM向けに大量生産を行い、溢れたものがリテールマーケットに流れているという現状は、必ずしもAMDの思惑通りに市場が動くわけではないという傍証ではあるのだが。
ただそういう状況であるから、いつまでもこのRyzen Proのバルク品が市場に安定供給されるとは思えない。というより普通なら絞る筈である。勿論AMDとしてはこのあとZen 3ベースの製品を投入予定であり、これが出てくるとまた優劣の関係が変わってくるから、「Renoirを強くお勧め」できる期間はそれほど長くはないのかもしれないが、とりあえずGPU統合の「優れた」CPUを求めているユーザーは、早めに手に入れる事をお勧めしたい。