◆消費電力(グラフ78~85)

最後に消費電力を確認してみた。まずDhrystone/Whetstone(グラフ78)、CineBench(グラフ79)、TMPGEnc Mastering Works 7のx265(グラフ80)とAMD SDK(グラフ81)、3DMark FireStrike Demo(グラフ82)、それとF1 2020の1080P(グラフ83)である。ちなみにRyzen 3000Xシリーズではグラフ81~83は意味がないので省いている。これらの変動からそれぞれの平均値をまとめたのがグラフ84となる。このグラフ84から、Idle時の平均消費電力との差を取ったのがグラフ85である。

  • グラフ78

  • グラフ79

  • グラフ80

  • グラフ81

  • グラフ82

  • グラフ83

  • グラフ84

  • グラフ85

ということで以下もう少し子細に。まずDhrystone/Whetstoneであるが、Ryzen 7 3700XとRyzen 7 Pro 4750Gの差がほぼ30Wほど。これはRyzen 5 3600XとRyzen 5 Pro 4650Gも同じ程度であり、つまりモノリシック構成にするだけで大幅に消費電力が減っている、という話である。実際グラフ85のDhrystone/Whetstoneの結果を見ると、Ryzen Pro 4000Gシリーズは他のどの製品と比べても大幅に省電力化が図られていることが判る。Ryzen 3000Gシリーズもかなり省電力ではあるのだが、Ryzen Pro 4000Gシリーズはその上を行く。

CineBenchの結果も同じである。こちらではもう少し差が縮まっており、Ryzen 3000XシリーズとRyzen Pro 4000Gシリーズの差はAll Thread/One Thread共に20W程度の差になってるが、それでも20W低いというのはなかなかだし、One Threadの場合で言えばRyzen 7 Pro 4750Gの消費電力はRyzen 5 3400Gより低いのだから、これまた優秀としか言いようがない。

TMPGEnc Video Mastering Works 7のx265の場合で言うと、Ryzen 3000Xシリーズは最初の25秒ほどは20Wほど消費電力が跳ね上がっており、これはXFRの効果である。これはRyzen 3000G/Ryzen Pro 4000Gシリーズには実装されていないため、ピークにあたる部分は存在しないのだが、その後の平均値で見るとRyzen Pro 4000GシリーズはRyzen 3000Xシリーズよりやはり20W以上消費電力が下がっている。これがAMD SDKを使う場合だと更に顕著で、そもそも100Wを超えないから、x265を使う場合に比べて更に30W下がるという高効率ぶりである。

FireStrikeやF1 2020については、先に示したようにそもそもの性能が低めだから消費電力も当然低めではあるのだが、Ryzen Pro 4000GシリーズはRyzen 3000Gシリーズよりも更に消費電力が下がっているあたりは、7nmプロセスの威力としか言いようがない。

さて、これらのデータを基に効率をちょっと計算してみた。まず表2がDhrystoneの結果である。Ryzen 3000Gシリーズが概ね2.0GIPS/W、Ryzen 3000Xシリーズが3.0GIPS/W未満なのに対し、Ryzen Pro 4000Gシリーズは4.0GIPS/W以上に達する。同様にWhetstone(表3)も圧倒的で、Ryzen Pro 4000GシリーズはRyzen 3000Gシリーズのほぼ倍に達している。

■表2
性能(GIPS) 実効消費電力差(W) 効率(GIPS/W)
Ryzen 3 3200G 123.65 57.7 2.14
Ryzen 5 3400G 139.87 69.2 2.02
Ryzen 5 3600X 225.20 82.4 2.73
Ryzen 7 3700X 298.36 102.4 2.91
Ryzen 3 4350G 149.73 31.6 4.74
Ryzen 5 4650G 227.84 55.2 4.13
Ryzen 7 4750G 314.45 78.6 4.00
■表3
性能(GIPS) 実効消費電力差(W) 効率(GIPS/W)
Ryzen 3 3200G 69.00 50.1 1.38
Ryzen 5 3400G 107.00 67.9 1.58
Ryzen 5 3600X 173.56 79.0 2.20
Ryzen 7 3700X 231.00 98.2 2.35
Ryzen 3 4350G 116.25 30.4 3.82
Ryzen 5 4650G 175.59 52.6 3.34
Ryzen 7 4750G 243.34 74.7 3.26

表4はCineBenchのAll Threadの場合の消費電力量である。要するに1枚の画像を生成するのに必要な電力量であるが、Ryzen Pro 4000Gシリーズは圧倒的に高効率である(Ryzen 3000Gシリーズ比でほぼ半分、Ryzen 3000Xシリーズと比べても1000W・secほど少ない)事が判る。

■表4
平均実効消費電力(W) 所要時間(sec) 消費電力量(W・sec)
Ryzen 3 3200G 101.6 194 19710.4
Ryzen 5 3400G 120.5 148 17834.0
Ryzen 5 3600X 140.7 78 10974.6
Ryzen 7 3700X 159.9 59 9434.1
Ryzen 3 4350G 82.8 124 10267.2
Ryzen 5 4650G 112.9 81 9144.9
Ryzen 7 4750G 136.6 59 8059.4

表5はTMPGEnc Video Mastering Works 7でx265を使ってエンコードした場合の消費電力量である。そもそも数時間単位の作業なので、消費電力量は表4のW・secではなくW・Hourで示している。この数字は4Streamの動画のトランスコードの分なので、1Streamだとこの1/4になる計算だが、Ryzen Pro 4000GシリーズはRyzen 3000Xシリーズと比べても更に少ない消費電力量で作業ができる事がお判りいただけるかと思う。

■表5
平均実効消費電力(W) 所要時間(sec) 消費電力量(W・Hour)
Ryzen 3 3200G 103.5 14530 417.7
Ryzen 5 3400G 125.2 11454 398.3
Ryzen 5 3600X 145.5 5382 217.5
Ryzen 7 3700X 158.8 4062 179.2
Ryzen 3 4350G 83.1 8739 201.7
Ryzen 5 4650G 113.5 5661 178.5
Ryzen 7 4750G 140.6 4156 162.3