無生物や食品が人間とふつうに会話したり、神様や宇宙人が一般大衆の中に溶け込んでいたりする"浦沢義雄氏のコメディー世界"はその後、テレビ朝日のスーパー戦隊シリーズ第20作『激走戦隊カーレンジャー』(1996年/メインライター)や、八手三郎・原作「メタルヒーロー」路線の第16作にあたる『ビーロボ カブタック』(1997年)、第17作『テツワン探偵ロボタック』(1998年)に受け継がれた。『カブタック』と『ロボタック』は、それまでのメタルヒーローとテイストが異なっていて、ユーモラスな体型をしたロボットが、少年との友情のパワーを受けることでカッコいいヒーロー風ロボットに"チェンジ"するという特徴があった。『カブタック』『ロボタック』は「不思議コメディー」と「メタルヒーロー」の要素が"融合"し、それまでのメタルヒーローとは異なる「ロボットホームコメディー」テイストの強い作品として、新たなる道を進み始めた作品群だといえよう。浦沢氏は『カブタック』では第7話「弱り目にタタリじゃ」など9本、『ロボタック』では第14話「恋する餃子の涙」など5本のエピソードを担当し、居並ぶ個性派ライターと拮抗しうる強烈な存在感を示している。
1998年1月28日、『がんばれ!!ロボコン』や『秘密戦隊ゴレンジャー』、『仮面ライダー』(1971年)をはじめとする東映特撮ヒーロー、キャラクターの数々を生み出した偉大なる"萬画家"石ノ森章太郎氏がこの世を去った。石ノ森氏の死を悼み、その功績を称えるとともに、『カブタック』『ロボタック』に続くロボットホームコメディー路線の決定版を作ろうという考えのもと、往年の大ヒット作『がんばれ!!ロボコン』を現代風にリニューアルする企画が立ち上がった。それが『燃えろ!!ロボコン』(1999年)である。
この時点で『がんばれ!!ロボコン』の放送(1974年)から25年もの歳月が過ぎており、当時「ロボコン」が好きだった視聴者が大人になり、子どもを持つ年齢になったことも製作の決め手になったという。親と子で新しいロボコンの活躍を楽しむという「ファンの二世代化」をも狙ったわけである。それだけ長きにわたる年月を経て作られる『燃えろ!!ロボコン』であるから、以前の『がんばれ!!ロボコン』と作風が異なってくるのは必然。ガンツ先生の声に野田圭一を招き、往年の名フレーズ「ロ~ボコン、0点」を再現してもらうなどのファンサービスも行われたが、旧作の持ち味だった"浪花節"的な人情喜劇風味ではなく、もっと「不思議コメディー」寄りの底抜けな陽気さを打ち出した作りが示された。
とはいえ、ロボット学校の仲間たちや親友ジュンとの友情を重んじ、困っている人を見ると放ってはおけず、あえて危険な行動に出るロボコンの"ロボ根性"は健在だった。作風や時代が違っていても、良い作品を作ろうという"志"は大事に受け継がれていくものだと『燃えろ!!ロボコン』はわれわれに教えてくれた。
『燃えろ!!ロボコン』の放送終了(2000年)から20年という節目を迎えた2020年、さらなるリニューアルが施された新生ロボコンが、こんどは劇場のスクリーンで大暴れすることになった。『がんばれ!!ロボコン』ではガソリン、『燃えろ!!ロボコン』では電気をエネルギーとしていたが、今回の『がんばれいわ!!ロボコン』では太陽光を頭のアンテナで取り入れエネルギーとするシステムだという。他にも各部のデザインが現代風にアレンジされているが、赤いダルマのようにユーモラスな全体のシルエットは初代ロボコン、二代目ロボコンのイメージを見事に受け継いでいる。
『がんばれいわ!!ロボコン』の脚本を務めるのは、『燃えろ!!ロボコン』でも6本のエピソードを担当した実績を持つ浦沢義雄氏。今回のサブタイトル『ウララ~!恋する汁なしタンタンメン!!の巻』から想像するに、浦沢氏の得意とする「無生物が意志を持ち、人間の言葉を喋る」展開が見られるのではないか……と早くもファンからの期待が高まっているようだ。
『魔法少女ちゅうかなぱいぱい!』では、主人公のぱいぱいは悪者・五目殿下によってラーメンに変えられた恋人・レイモンドを見つけ出すため人間社会にやってきた。レイモンドがラーメンにされたとき、シンデレラのガラスの靴のように「ナルト」を落としていったため、ぱいぱいは中国料理店に入っては「ナルトのないラーメン=レイモンド」がいないか探している。
また『勝手に!カミタマン』では、長男の中華そば、次男のモヤシそば、末っ子の五目中華の仲の悪さを、冷やし中華の母親がカミタマンにグチる第19話「長寿庵の中華三兄弟」というエピソードがあった。人間ひとりひとりの個性が違うように、麺類にも多種多様な個性があり、それぞれが雄弁に自己を主張する。そんな「浦沢ワールド」が今一度「実写」の新作映画として観られることに、喜びを感じているファンも多いことだろう。
そして監督を務めるのは、メタルヒーロー第10作『特救指令ソルブレイン』(1992年)第19話「亀ちゃんと名探偵」でデビューを果たし、『燃えろ!!ロボコン』では「ヒデ・I」名義で演出ローテーションに加わっていた石田秀範氏である。石田監督は『燃えろ!!ロボコン』に続く『仮面ライダークウガ』(2000年)以降の「平成仮面ライダーシリーズ」では第1、2話をはじめとする主要エピソードを手がけるメイン監督して活躍し、近年でも『仮面ライダーアマゾンズ』シリーズ(2016~2018年)や『GOZEN―純恋の剣―』(2019年)などのシリアスなアクション作品でその手腕をふるっている。今回は『燃えろ!!ロボコン』以来ひさびさに「ロボットコメディー」作品を演出することになった。新時代に甦ったロボコンは、令和の時代を生きる子どもたちのアイドルになれるかどうか。今から公開日が楽しみなところだ。
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