日本中の子どもたちから愛された『がんばれ!!ロボコン』は、全118話というロングラン放送を成し遂げ、1977年3月25日に最終回を迎えた。終了のきっかけは、NETからテレビ朝日へと社名が変更されるにあたって、NET時代の番組をすべて終わらせる方針がとられたからだという。1961年から続いてきた長寿ドラマ『特別機動捜査隊』や、1975年4月から約2年続いた『秘密戦隊ゴレンジャー』も同じく終了を迎え、それぞれ『特捜最前線』(1977年~1987年)、『ジャッカー電撃隊』(1977年)にバトンタッチしている。『がんばれ!!ロボコン』もまた、ほぼ同じスタッフによる『ロボット110番』(1977年)に後を託すことになった。

『ロボット110番』はガンガラガンちゃんと仲間のロボットたちがロボット博士に立派なロボットセンター(研究所)をプレゼントするため、ロボットによるサービスを提供する会社(ロボットサービスセンター)で日夜奮闘するキャラクターホームコメディードラマである。ロボットが人間の役に立つ働きをするというのは『がんばれ!!ロボコン』と同じだが、本作では毎回ある程度のお金を稼がなければならない、というのが新味の部分である。頭のいいケイくんや優しいパールちゃんと違い、少々あわて者のガンちゃんはせっかくお金を稼いでも周囲の建物を壊したりして"赤字"を出すことがほとんどで、そのたびに経理ロボット・ミスターチーフの指示で「バッテンパンチ」という厳しい"罰"が与えられるのだ。ロボットたちの生みの親・ロボット博士に扮したのは原作者の石ノ森章太郎氏で、通常は事務所に飾られている写真のみでの登場だったが、最終回にはしっかり俳優として出演を果たし、ガンちゃんたちを優しく励ましている。

  • ベストフィールド『ロボット110番』DVDジャケット(著者私物)ガンちゃん(声:野沢雅子)は乾電池で動くロボット。サービスセンターで稼いだ売上金から電池代や弁償代などを引いた額がマイナス(赤字)だと、無慈悲にもバッテンパンチが襲いかかるのだ

『ロボット110番』の後番組は、少年野球の女監督を主人公にした青春スポーツドラマ『がんばれ!レッドビッキーズ』(1978年)となった。原作の石ノ森章太郎氏、脚本の上原正三氏など、前作と共通するスタッフは多いものの、『がんばれ!!ロボコン』から始まった石ノ森原作のロボットホームコメディーの流れは3年でひとまずの区切りを迎えたことになる。『がんばれ!レッドビッキーズ』は女監督・江咲令子を演じた林寛子のアイドル的人気や、個性的な選手たちが野球を通じて"成長"を遂げていくドラマの面白さなどで好評を博し、高校バレーに青春をかける少女を主人公にした『燃えろアタック』(1979年)や、新たなレッドビッキーズの奮闘を描いた続編『それゆけ!レッドビッキーズ』(1980年)とシリーズ化されていった。

『それゆけ!レッドビッキーズ』の製作スタッフは、同時期にテレビ朝日系で放送されていたスーパー戦隊シリーズ『太陽戦隊サンバルカン』のスタッフと一部合流し、新たなる東映特撮ヒーロー作品『宇宙刑事ギャバン』(1982年)に携わっていく。『宇宙刑事ギャバン』を元祖とする"メタリックな装甲に身を包んだアクションヒーロー"路線はシリーズとなって継続し、やがて「メタルヒーロー」なる総称が与えられた。『宇宙刑事ギャバン』を第1作とする八手三郎・原作の「メタルヒーロー」路線は、第17作『テツワン探偵ロボタック』(1998年)まで続いた。

『宇宙刑事ギャバン』の半年前となる1981年10月4日、ふたたび『がんばれ!!ロボコン』を思わせるロボットホームコメディードラマが放送された。しかし、原作・キャラクターデザインを務めた石ノ森章太郎氏以外の、ほぼすべてのスタッフが一新され、放送局もフジテレビ系となっていた。それが『ロボット8ちゃん』(1981年)である。『8ちゃん』では笑いあり涙ありの"人情喜劇"テイストの強かった『がんばれ!!ロボコン』とは"真逆"の方向性を狙い、当時のフジテレビが掲げていた「楽しくなければテレビじゃない」というスローガンそのままのバラエティ番組風味、具体的に言えば『おれたちひょうきん族』に見られるようなスラップスティック(ドタバタ)コメディーに突き抜けた作風が目指された。ロボット管理庁に登録のない"野良ロボット"の8ちゃんを追いかけまわし、バラバラにするのが生きがいの男・バラバラマンこと黒木七郎(演:斎藤晴彦)の果てしないバイタリティや中年の哀愁、そしてライバル関係にある8ちゃんとの奇妙な"友情"などは本作の大きな魅力となり、それまで"不毛の時間帯"と言われた「日曜朝(9:00~9:30)」の放送枠でありながらじわじわと視聴率を上げ、後半では16%を超える好成績を何度も叩き出すまでに人気を高めていった。

  • ベストフィールド『ロボット8ちゃん』DVD解説書表紙(著者私物)

『ロボット8ちゃん』が突き進んだ「バラエティ感覚のライトな笑い」路線を強めるかたちで、宇宙からやってきたロボット・ロボ丸が活躍する『バッテンロボ丸』(1982年)が同じ「フジテレビ日曜朝9時」枠で放送された。正義の味方を自称するロボ丸は一応の正義感こそあるものの、自分を少しでもカッコよく見せたいという煩悩の塊で、したたかな性格の愛すべきお調子者だった。

『8ちゃん』第3話より参加し、後半からはバラバラマン絡みのエピソードを多く手がけていた脚本家・浦沢義雄氏は『ロボ丸』では第1話をはじめ、全体の半数近い19本ものエピソードを担当している。第10話「神様がスーパーカーでやってくる!!」の神様(演:石山律雄)や第13話「地球さいごの大みそか」のカンチャン星人(演:石井愃一)、第31話「どうなる?!恋の三角関係」の天狗といった、人知の及ぶところではない突飛すぎるキャラクターを(わりと気軽に)出して、一般的な常識を備えた周囲の人物を煙に巻いてしまうような作劇が浦沢脚本の持ち味。ことさら「教育」や「道徳」を打ち出すことなく、徹底的に「娯楽」方面に振り切る姿勢は、『がんばれ!!ロボコン』とはまさに"真逆"。『8ちゃん』や『ロボ丸』は新感覚のコメディードラマとして、メインターゲットの子どもたちだけでなく、常に"面白いもの"を追い求める鋭敏な感覚を持った青年層をも魅了していくのであった。

メインキャラクターをロボットから「不思議な生物」にチェンジした『ペットントン』(1983年)では、ついに浦沢氏が全話のシナリオを担当することになり、宇宙からやってきた奇妙な生物ペットントンと平凡な小学生ネギ太との友情を軸に置きつつも、風変わりなキャラクターを脇にどんどん配置して、時に"シュール"と言っても過言ではない突き抜けた笑いを送り出していった。

『ペットントン』第30話「横浜チャーハン戦争」ではチャーハンとシューマイが結婚式を挙げ、結婚指輪ではなくお互いのグリーンピースを交換した。また第36話「豆腐がおこった日」では「将来どんな料理になりたいか、大豆のころから夢見ている"豆腐"たち」を愛する豆腐屋と、彼の崇める「豆腐大明神」なる奇想天外なキャラクターがストーリーをかきまわした。無生物や食材、料理などが意志を備え、(大した説明もなく)しゃべり出すといったシュール気味なコメディードラマは『ペットントン』でその指針がはっきり定まり、8億年前の妖精が活躍する『どきんちょ!ネムリン』(1984年)、頼りなくていいかげんなスーパーヒーローの神様とさえない少年の友情を描く『勝手に!カミタマン』(1985年)、動物とロボットを仲良くさせる"サムシング"を探し求める生真面目なロボットの苦難を描く『もりもりぼっくん』(1986年)と続き、個性豊かなキャラクターと素っ頓狂なゲストとの「奇想天外」かつ「変に常識的」なやりとりが幅広い層に愛され、親しまれた。

『もりもりぼっくん』の後番組からは、奇抜なキャラクターを主人公に置くのではなく、少年少女を主役にしたファンタジックなジュブナイルドラマが志向された。探偵団と怪盗との戦いを通じて、少年たちが"何か"をつかみ人間的成長を遂げていく『おもいっきり探偵団 覇悪怒組』(1987年)と『じゃあまん探偵団 魔隣組』(1988年)である。この方針変更も見事に当たり、2作の『探偵団』は大好評をもって迎え入れられた。

その後はまたしても浦沢義雄氏の味とする「シュールなコメディー」を「変身ヒロイン」と合体させ、魔法を使って事件を解決する美少女ヒロインドラマ『魔法少女ちゅうかなぱいぱい!』(1989年)と続編『魔法少女ちゅうかないぱねま!』(1989年)、神様に代わってご町内と宇宙の平和を守る女子高生ユウコの物語『美少女仮面ポワトリン』(1990年)、51匹のナイルの悪魔を封印する宿命を背負った女子高生サナエの激闘を描く『不思議少女ナイルなトトメス』(1991年)、大企業によるリゾート開発のため龍宮城が崩壊し、人間に姿を変えてひっそり暮らしている魚介類たちを歌で癒す本格ミュージカルコメディー『うたう!大龍宮城』(1992年)、酉年の平和を守る美人三姉妹と邪悪な妖怪たちの戦いを描く『有言実行三姉妹シュシュトリアン』(1993年)と、1年に1作のペースでクオリティの高い作品が生み出されていった。

今回はロボットコメディーをメインにした記事のため、このあたりの作品群はタイトルのみの紹介ですませてしまったが、機会があればこれら「フジテレビ日曜朝9時(1981~1993)」のシリーズ、通称「東映不思議コメディーシリーズ」については、改めてじっくり1作ずつ記事としてまとめていきたいところだ。