◆PCMark 10 v2.0.2144(グラフ86~89)
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/pcmark10
お約束でこちらも。まずOverall(グラフ86)で見ると、PCMark 10 Express/PCMark 10ではややGeForce GTX 1660系が有利で、ところがPCMark 10 ExtendedやPCMark 10 Applicationsでは差が殆どなくなるという、いつものパターンである。
で、Radeon RX 5600 XTが遅い理由はTest Group Detail(グラフ87)を見ると判る様にProductivityで、一方PCMark 10 ExtendedではGaming(要するにFireStrike)が加味されるのでこの差が埋まるという形だ。ただTest Detail(グラフ88)を見ると判るように、Radeon RX 5600 XTが遅いのはOpenCLを利用したSpreadsheetsとかVideo Editingなどで、逆にPhoto Editingなどではむしろ高速になるという面白い傾向になっているが、なんにせよOpenCLの要素を除外するとあまり変わらない、ということになる。これはOffice 365を利用したApplication Test Detail(グラフ89)からも明らかで、もう誤差というかテスト結果の揺らぎのレベルの差でしかない。
要するに普通に使う分には今回の4製品の間に差はない、ということだ。
◆消費電力(グラフ90~95)
最後にいつもの消費電力測定を。まずグラフ90が3DMark FireStrike Demo、グラフ91がSuperPositionの2K、グラフ92はF1 2019を2K、Anisotropic Filter 4xで実施した場合、グラフ93がFinal Fantasy XV Windows Edition Benchmark 1.2を2K・標準品質で実施した場合の結果である。各々の待機時の消費電力と、それぞれ全力稼働中の平均消費電力をまとめたのがグラフ94、ここから待機時の消費電力との差をまとめたのがグラフ95ということになる。
ということで総じてみてみると、OC版Radeon RX 5600 XTの消費電力の高さがちょっと目立つ。冒頭に書いたようにSilence BIOS版のTGPが135W、Performance BIOS版は160Wとされているので、その差は25Wという計算になるが、実際にはもう少し多く30~40Wほど消費電力が上乗せになっている形だ。
それはともかく、Radeon RX 5600 XT(つまりSilence BIOS版)の消費電力は、概ねGeForce GTX 1660 Tiと同程度~少し多い(~10W)程度に収まっており、性能差を考えるとかなり優秀な部類ではないかと思う。そのGeForce GTX 1660も、SuperとTiの差はごく僅かで、こうなるとGeForce GTX 1660 Superの性能/消費電力比の悪さがちょっと気になるところ。効率だけを考えればGeForce GTX 1660 Tiの方が優秀で、これとRadeon RX 5600 XTはほぼ同程度と思われる。OC版Radeon RX 5600 XTは確かに性能はピカイチだが、その分消費電力も増えており、効率という面ではやや悪化している。
◆考察
ということで無駄にグラフが多くて申し訳ありませんでした。
ま、それはともかくとして、Radeon RX 5600 XTはなかなか優秀な製品だと思う。少なくともGeForce GTX 1660 Tiの性能は超えた、と結論付けて良いと思うし、消費電力的にも悪くない。あとはもう価格と入手性の問題だけであって、こちらの記事の最後に書いた「4万をちょい切る」位だと、コストパフォーマンスはGeForce GTX 1660 Tiと同等。これより下がればお買い得といった感じに思える。
微妙なのはOC版BIOSである。確かに性能は上がるが、その分消費電力も多くなる。気になるのは、これも冒頭に書いたがGDDR6を14Gbpsでオーバークロック動作させていることで、なんとなく製品寿命的にどうだろう? という懸念が残る。素直にGDDR6 14Gbps版のRadeon RX 5600 XTの出荷が許されるなら、「おすすめ」としたいところではあるのだが。
ところで気になるのはNVIDIAの動向である。彼らの性格からして殴られっぱなしということにはならないだろう。とはいえ、現在のTU116コアをほぼフル構成でGeForce GTX 1660 Tiが使っている以上、このコアで更に性能を引き上げるのは難しい(荒業でGDDR6 15.5Gbps品を突っ込むというのはあるかもしれないが)。むしろ、TU106(要するにGeForce RTXのコア)を流用する方がありそうではあるのだが、なにしろダイサイズが極端に違う(TU106は445平方mm、TU116は284平方mm)から、Radeon RX 5600 XTと競合する価格で出すと、相当利幅を削る必要があるだろう。実際、Superでない初代GeForce RTX 2060は4万を切る価格で入手可能であるが、値段が下がるのを嫌がったかそのGeForce RTX 2060を終了にしてGeForce RTX 2060 Superを4万円台中盤~5万円で販売しているのが現状であり、もう一度4万円未満の市場にTU106を投入するのは多少躊躇するところもあると思われる。このあたりを含めて、今後のNVIDIAの対抗策が気になるところだ。