唯一のハードウェアの発表だった「Mac Pro」とRetina 6Kパネルを搭載した32インチ液晶ディスプレイ「Pro Display XDR」。トライポフォビア(集合体恐怖症)の人達が卒倒しそうなデザインが論争を巻き起こしているが、拡張性とカスタマイズ性が高く、プロユーザーのニーズを満たすパワーを備えているという点では誰もが同意することだろう。その3点こそがAppleが新Mac Proの開発で約束した存在意義であり、新Mac Proは驚くほど真っ当にそれらをクリアしている。
Mac Proが5,999ドルから、Pro Display XDRが4,999ドル (さらにPro Standが999ドル)という価格も論争になっているが、少なくともMac Proに関してはワークステーションとしての価値を認める声が優勢だ。見方を変えると、過去のMac Proは「The workstation for the rest of us」と呼べるような存在で、スモールビジネスや個人にDTPやDTMを広げたが、新しいMac Proはプロユーザー向けのプロのニーズを満たす機材である。Dan Moren氏がSix ColorsでのAppleのWWDC発表のまとめの中で、「Mac Proの良いところ:容易なモジュラリティとアップグレード」、「残念なところ:私達向けではない (It’s not for you)」としているが、その通りだと思う。Adobe、Autodesk、Serif、Blackmagic Design、SideFX、RED、Unreal Engine、Avid、Unity、Pixar、Foundry、MaxonなどがMac Proのサポートを表明した。真のツールは使われてこそ価値がある。Mac Proのパワーとカスタマイズ性を活かしたソフトウェアとの組み合わせが、どのような成果を生み出すか楽しみだ。
今回のキーノートでは、最初にApple TV+のオリジナル作品の1つ「For All Mankind」のトレーラーが披露された。3月にApple TV+などを発表したスペシャルイベントはクリエイターを意識した内容になっていたが、これからAppleは映像コンテンツを配信するだけではなく、これまでに無かったような作品を生み出せるようにクリエイターを技術的にもサポートしていく。Mac ProやPro Display XDRの提供はその一環であり、再びエミー賞のエンジニアリング賞を狙える場所にAppleは戻ってきた。