2010年に初代iPadが登場した時、iPadは大きな画面でコンテンツを消費するためのタブレットだったから、iOSで充分に機能できていた。しかし、2015年にiPad Proが登場してから、iPadはコンテンツを作るクリエイティビティのためのデバイスとして進化し始めた。現在のラインナップはベーシックモデルのiPadからiPad mini、そしてiPad Proまで全てのモデルがApple Pencilをサポートする。昨年発売のiPad Proは接続インターフェイスにUSB-Cを採用しており、PCの領域にさらに踏み込んだ。一方で、iPhoneは画面が大型化しているとはいえ、今もタッチで操作するハンドヘルドデバイスだ。これだけ使い方が異なってきたiPadを、iPhone向けであるiOSでカバーし続けるのは無理がある。だから、iPad用のOSを「iPadOS」としてiOSから独立させた。
独り立ちしたことで、隔年ペースになっているiPadのためのアップデートを毎年得られるようになるだろう。iPadへの最適化も進むはずだ。例えば、iPadOSでApple Pencilの描画遅延が20msから9msに短縮される。
iPadOSは、秋のリリースが楽しみになる数々の新機能を備える。新しいホーム画面には1ページに最大30個のアプリを置ける。マルチタスクが強化され、同じアプリをスプリットビューの複数のスペースに配置できるようになり、スライドオーバー内でも複数のアプリを切り替えられる。カーソルの移動やテキストのコピー&ペーストがマルチタッチジェスチャーでより自然に行え、Apple Pencil向けにも新しいツールパレット、スクリーンショット機能とフルページのマークアップなど様々な機能が追加される。また、「ファイル」アプリが外部のUSBメモリーやSDカードのファイルを扱えるようになり、基調講演では紹介されなかったが、アクセシビリティ機能でマウスのサポートが実現する。
新機能群の中で、特にインパクトが大きそうなのが、Safariのデスクトップ・モード動作である。PCのブラウザと同じようにWebサイトを利用できる。それがなぜ重要なのかというと、例えばGoogle Docs (Googleドキュメント)だ。米国ではGoogle Docsを採用している公立学校が多い。GoogleはiOS版のGoogle Docsアプリを提供しているが、作為的なものを疑いたくなるほど機能が限定的、しかしiPadのモバイルブラウザでGoogle Docsは使えず、Google Docsが使えないからiPadではなくChromebookが採用される。デスクトップモードのSafariならGoogle Docsが動作するはずで、実際それを確認したメディア関係者から称賛の声が上がっている。