開発に2年半を費やした新カメラモジュール

──2019年に登場するNew XPS 13において、3年先を見越した新しい技術として採用したのは何でしょうか?

エイゾール氏:XPSが登場するとき、DELLはXPSにその時点で最高の技術や性能、品質を与えるのが使命と考えています。そのためには開発に長い時間、場合によっては3年も5年もかかるケースもあります。2019年に登場するNew XPS 13では、カメラモジュールを大きく改善しましたが、その開発には2年半かかっています。

今回のカメラモジュールは、DELLがこれまで開発した中でも最小のサイズです。従来は7mmサイズだったのが2.5mmサイズまで小型化しました。この小型化によってボディサイズを変えることなく、これまでのディスプレイの下に配置していたWebカメラをディスプレイの上に変更できたのです。

  • 従来のカメラモジュール

  • 最近のXPSノートPCでは、狭額縁の「InfinityEdge」ディスプレイを採用するため、カメラは画面の下側に配置されていました

  • 新しいカメラモジュール。上側の部分がレンズです

  • カメラの小型化によってディスプレイの上側にカメラを配置することが可能となりました。ちなみにディスプレイ自体は少しだけ下に移動しています

XPSのユーザーはカメラが小型になったからといって画質が劣化することは許容しません。そのため、小型化にあたっても画質は劣化しないように努めました。

カメラモジュールが小型化すると、レンズを通る光の量が少なくなり、画質が劣化しますが、4枚のレンズを用いた新しいレンズを開発するとともに、ソフトウェアによる画像補正技術も新たに導入することで、XPSに求められる画質を実現しています。

──新しいカメラモジュールはDELLだけで開発したのでしょうか。

エイゾール氏:カメラモジュールの開発では、外部の企業との連携で開発しています。特にレンズの技術を持っているパートナー、高速なデータ転送が可能なフレキシブルコネクタの技術を持っているパートナーとの連携は重要でした。

開発においては、DELLから要求仕様を提案し、その要求を実現できるソリューションをパートナーから提示してもらう形で作業を進めました。DELLの要求仕様に対してレンズ開発パートナーから最初に提示されたのは4mmサイズのカメラモジュールでしたが、このサイズではまだ大きすぎたため、DELLからは2.5mmもしくはそれ未満のサイズを求め、2.25mmのモジュールを提示してもらうことができました。

しかし、今度は小さなレンズでありがちな「周辺部のゆがみ」など画質が従来のXPS 13より劣化することが分かり、さらなる改善を求めたところ、レンズの改良やソフトウェアによる画質補正などによって最終的にはDELLが求める以上の画質を実現できたのです。

このように、新しい技術を高いレベルで実現したいとき、優れたパートナーとの協力関係が重要です。多くのPCメーカーでは、優れたパートナーを自分たちの組織に取り込んでしまうケースも少なくありません。

ただし、DELLは常に最新の技術を取り込む柔軟性を持つために、そのときで高い技術を持つパートナーと連携するようにしています。例えば技術を持つ会社を買収するといった方法もありますが、自分たちの組織にしてしまうと、その技術に長い期間縛られてしまう可能性があります。

技術の進化スピードが速い状況において、これはいい方法とはいえません。そのときに最新の技術を有しているパートナーを見つけて連携するのが最もいい方法とDELLは考えています。

──カメラモジュールの開発で連携したレンズメーカーは公開していますか?

エイゾール氏:非公開です。

──スマートフォンなどでは、レンズメーカーを公開してそのブランドも訴求するケースも多いですが。

エイゾール氏:New XPS 13にとって新しいカメラモジュールは重要な要素ですが、ノートPCとしてはほかにも訴求するポイントがあります。ユーザーに対するスマートフォンとノートPCの訴求方法は異なりますから、DELLとしてはレンズメーカーを公開して、それを訴求することはしないと判断しました。