2019年の自作パーツの動向を占う「PCテクノロジートレンド」。プロセス、CPU、GPUときて、最終回はメモリやSSD、チップセットの動向を解説する。2018年はいろいろと動きがあったが、2019年はそれがひと段落しそうだ。

  • Photo01:ニトリのペット用ベッドに収まるポン太(白黒)とヴィーノ(黒)。夏用のクールベッドなのでそろそろ冬用に変えたいところなのだが、よほど気に入ったのか出てくれない

2018年のDRAMというかDIMM業界は、Overclockと光る方向に進化した感があった。まぁその話はおいておくとして、DRAMを製造している方のベンダーの話をしたい。

Photo02はTechInsightが公開しているDRAM Technology/Products Roadmapsからの抜粋である。一番先行しているのがSamsungであることは変わらないが、Samsungも現時点では、メインとなるのはDDR4である(一部の1y nmプロセスでDDR5も可能ではあるが)。

  • Photo02:Nanya/winbondは現時点ではまだDDR3が主力なので、ロードマップとしてはトップ3社(Samsung、SK Hynix、Micron)のみを対象に、話を進める

本格的にDDR5の製造が可能となるのは、Samsungの1z nmとMicron/SK Hynixの1y nmの量産が始まる時期で、2019年の中旬以降ということになる。ただし、現実問題として2019年中にDDR5への移行は起きないと予測される。

SK Hynixは2018年11月に、DDR5チップの製造を行ったというリリースを出した(Photo03)が、実は現時点でもDDR5の仕様策定は完了していない。SK Hynixが製造したのは、DDR5の初期仕様に基づくES品というか評価用のチップであって、これをもって量産準備が完了したわけではない。

  • Photo03:SK HynixがリリースしたチップとDIMMであるが、そもそもこのDIMMはCGの可能性が高い(というか、リリースにはDIMMモジュールが完成したとは書かれていない)

チップ側としては、CadenceがDDR5の初期仕様に基づくIPを7nmプロセス上で動作させるデモを公開しているが、これを見ればわかるように、まだ評価基板ボードの話であって、これをチップセットなりSoCに統合するにはそれなりの時間が掛かる。

なにより、現状は初期仕様のシリコンを使って検証しようという段階であって、その結果を仕様に反映させ、標準化が完了するまでにはもうしばらくかかりそうだ。

では「標準化が完成したらすぐに普及するか?」というとそんなことはない。まずDRAMメーカーは、完成版の仕様に基づいて、改めてDRAMチップ(とDIMM)を試作。これと並行して、IPベンダーは完成版に基づくDDR5のI/F IPを設計し、SoCベンダーがこれを組み込んで評価用チップを試作する。

このチップ上でDDR5のDRAMチップやDIMMの評価を行い、問題ないことが確認できたら、SoCベンダーからのCertificationをメモリベンダーに対して発行、以後メモリベンダーはそのCertificationに合致する条件でメモリチップとDIMMを量産する。一方でSoCベンダーはこのI/Fを実際の製品に組み込み、出荷する形になる。

問題は、まだこの先にCertificationが続くことだ。今度はマザーボードベンダーとかサーバーベンダーが、IntelなりAMDのCPUやチップセットとメモリベンダーのDIMMモジュールを組み合わせて、きちんと動作するかを確認することになる。特にサーバーベンダーの場合、このCertificationにものすごく時間がかかる。

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IntelやAMDも次世代のさらに先でDDR5をサポートの見込み

というわけで、2019年の早い時期にメモリチップやDDR I/F IPが用意されたとしても、2019年一杯はCertificationに費やされることになるだろう。最初のDDR5対応製品やDDR5 DIMMが市場に投入されるのは、2020年の恐らく後半、DDR4との価格のCrossover(同じ容量のDDR4とDDR5の価格が逆転する)は、2021年以降と予想される。

現実問題として、2019年のIntelとAMDのPlatformではDDR5をサポートしない。DDR5のサポートは、Intelの場合、2020年のWillow Coveベースの製品(昔はこれがTiger Lakeというコード名だったはずだが、現在は何なのか不明)になるだろう。

AMDもCPU Deep Diveでも説明した通り、Rome PlatformはDDR4のままだ。ただし、メモリチャネル数は16に増加、これが次のMilan PlatformでDDR5×16になると予想される。

Milan PlatformはZen3コアを搭載する製品になり、投入時期は2020年末~2021年となるだろう。ちなみにRyzenにしてもEPYCにしても、7nm世代以降はメモリコントローラがI/O Die側に移動するから、DDR4→DDR5へのCPUの対応そのものは難しくないが、プラットフォームが全取り換えとなるから、やはり相応の準備期間が必要である。

まとめに入るが、2019年中は引き続きDDR4のみが使われることになるだろう。Photo02に戻ると、2018年にMicroとSK Hynixがどちらも1xnmの生産を開始している。

最初は生産量も少ないが、2019年中には生産量も増えているはずで、結果として生産の主流がDDR4-2133/2400からDDR4-2666以上にシフトし、OverclockなしでDDR4-2933/3200が利用可能なメモリチップも入手可能になるだろう。この点は自作ユーザーには多少メリットがあると思われる。