――先程の新しい時代の作品というところで、既存のシリーズではなく、まったく新しいものをというお考えはありますか?
やっていかなきゃいけないんですけどね。ただまあ目先の話ではありません。今年来年の話ではないかな。
――これだけ続き、浸透している「仮面ライダー」「スーパー戦隊」ですが、特撮ヒーロー作品というもののこれからの可能性を、白倉さんはどうお考えなのでしょう。
正直、「スーパー戦隊」シリーズも含めて、こんなに続くと思っていなかったんですよ。私が会社に入ったころって、「仮面ライダー」シリーズはないし、「スーパー戦隊」シリーズも"風前の灯"なんて言われていました。「来年はないね」などとも言われていた「スーパー戦隊」が、こんなに続くと思っていなかったし、「仮面ライダー」も、やることがなくてライダーでもやるしかなかったというのが、正直なところでした。当時、30年前に当たった番組をなんで今頃掘り出さなきゃいけないの? そんなにネタ切れなの? どうしても「仮面ライダー」しかないの?なんて言われたものが、こんなに続くとは。
続いたこと自体はありがたいんですけれど、これをもっと広げていきたいんですよね。「仮面ライダー」は「仮面ライダー」で、「スーパー戦隊」は「スーパー戦隊」で発展させていきたい。それは日本にとどまりません。「スーパー戦隊」は「パワーレンジャー」という形で羽ばたいてはいますけれども、そこを含めてもっともっと発展する余地はあると思うし、それ以外の可能性を広げることもしていきたい……していきたいんですけれど、肝心の本家本元の「仮面ライダー」「スーパー戦隊」が内側を向いていってしまっているのが現実だと思うんですよね。10年前には考えられなかったほど浸透しているということそのものが、天下を取ったというわけでもないのに、作り手側を内向き志向にさせちゃったというところがある。そこをまずは打破していかないと。
だから、今あるシリーズをいい感じで未来志向的に維持していくこと。その延長線上でしか、新しいものって生まれてこないと思っています。全然違うものとか、ただ趣味に走っているものは作れるかもしれませんが、組織としてやっている以上、「仮面ライダー」なら「仮面ライダー」、「スーパー戦隊」なら「スーパー戦隊」で培ったノウハウが別の形で生かされていくものだと思うので、まずは土台をしっかりさせないといけないですよね。
――『仮面ライダーアギト』から、ドラマ作りにおける仕組みや、劇場版の展開など、白倉さんが当時取り入れたものは、今から考えると長期シリーズ化を前提に取り込んだものだと思っていたのですが、当時はこんなに続くとは思っていなかったのですね。
考えていませんでしたね。そういうことをやっていたのも、「仮面ライダー」としてというよりも、まずは番組として、日曜あさの枠というものをどういうふうに位置づけていくのかが重要でした。劇場版に関しても、賛成する人間もいましたが、反対する人間も多かった。「そんなの当たるわけがない」というのが一つあるし、「テレビを作りながら片手間に映画を作ることが許せない」という意見もありました。ここは映画会社ですからね。
それまでもテレビの劇場版というのはあるにはあって、『踊る大捜査線』なんかはその典型ですね。ですが、それもテレビシリーズが終わってから、きちんとふさわしい時間をかけて体制を整えてから制作するもの。それなのに、お前らは片手間にやろうとしている、テレビの衣装を使っちゃえ、テレビのセットを使っちゃえ、そんな安直なことをやられては、映画会社としてのプライドを捨てることだ、と。これはもうさんざんに説教された。
でもまあ、そこに反論するわけじゃないんだけれど、じゃあ"作る意味"ってなんなのかというのをあの時は毎年毎年考えていたんです。偉そうに上から目線でいうと、長寿シリーズでは、"作る意味"を考えなくても、見様見真似でやることができるようになってしまうところがある。仕事を覚えるという意味では、そこに良さもあります。ですが逆にいえば、自分がそのノウハウの意味そのものがわかっていないで、ほかのノウハウがこの世の中にありうるんだということも想像しないで、ただ漫然とやっていると、結局同じことしかできないことになってしまうんですよね。