――時代の変化の中で、プロデューサーの役割が変化していると感じることはありますか。

プロデューサーの役割って、昔も今も"現場を成立させること"。これはお金をどうするかということも含めてなんですけれど、撮影現場を成立させるということが唯一絶対の役割だとは思うんですよね。青臭い理想論でいくと、監督だったり脚本だったりスタッフ、あるいはキャストが、"天から降ってきた"ようにチャンスを与えられて、やりたい放題だと困るんだけど、でも自由にその才能を活かす場を与えられている状態を作る、というのが理想だと思います。

でも正直にいうと、今回募集しようとしている人たちにそこまで求めてはいないんです。例えば今回応募した方に、「お金を集めてこいや~」とか、「どこかスポンサーを口説けや~」とか、そういう役割を求めているわけではない。言葉を選ばずにいうと、そのやり方自体には、どうしても限界というものがありますから。

ですが、メディアの多様化もそうだし、スピンオフもやたらめったら多いしで、「仮面ライダー」「スーパー戦隊」というものが、お陰様ですごく浸透していったことで関係者が多くなっている。私なんかを例に挙げるのはあれなんですけれど、それによって調整ごとが多岐にわたるようになってきちゃったんですよね。そうすると、ある一つのことをやるにあたっても、それによってどんな影響があるかという周辺環境のことまで考えながらやっていかなきゃいけない。これでは、発想というものに制約ができてしまうんです。

かつてよりもやれることの幅がどんどん狭まっている。これを打破する必要があるとは思っているのですが、それは、もうこのがんじがらめの私とかには無理なんですよね。そこに、新しい目線が必要なんじゃないか。「仮面ライダー」業界とか、「スーパー戦隊」業界とか、業界化しちゃっていて、業界人のものの見方になっちゃっている。それは視聴者目線とは縁もゆかりもないので、"視聴者目線"が必要になっているといえるのかもしれないですね。

昔はプロデューサーというのは"最初のお客さん"だと言われていたそうです。オールラッシュ(音声などがついていない、撮影したものをまとめたもの)を見るときに、あとで監督とディスカッションするために、映画の最初の観客として、「観客は作品をどう見るのか」と、プロデューサーが判断する。

昔は試写会にいたプロデューサーが寝ていて……ということもよくあったらしいんですけれど、そのプロデューサーが「おもしろかった」といえば、その映画は観客が居眠りしてもおもしろい作品だという(笑)。でも本当に微細なことなんですけれど、タイアップ先がどう、誰それの出番がどうとかばっかり気にしているんですよ、今のプロデューサー陣というのは。それはお客さんでもなんでもなくて、業界人なんですよね。だからこそ、客目線に近い、しがらみから自由な目線というのが必要かもしれないと思っています。