デバイスの垣根をなくすクリップボード履歴
Windows 10 バージョン1809で地味に便利なのが、クリップボード履歴だと筆者は感じている。本機能は[Win]+[V]キーを押すと現れるフライアウトからクリップボードの履歴を参照するというもの。格納できるのは書式なしテキスト/HTML/画像に限られ、各データ1MB未満、全体データは5MB未満、クリップボード数は50アイテムまで。筆者が確認した限りだが、いずれかの制限が超えた時点で古い履歴から削除される。
もちろんこれだけであれば、同種の機能を持つオンラインソフトが過去に存在し、改めて標準機能を用いる必要はない。だが、クリップボード履歴は同じMicrosoftアカウントを用いるPC間での共有が可能なため、デスクトップPCと2-in-1 PCの併用など複数台のPCを場面に応じて使い分ける時に有効だ。
筆者の例はあまり役に立たないかもしれないが、自宅で仕事をする際の文章作成は主にデスクトップPCで済ませている。だが、バッテリーや無線LANといった2-in-1 PC固有の機能を検証する際は、クリップボードを共有することで、コマンドの実行やその結果をデスクトップPCに持ち込めるため、Insiders Preview時代から愛用してきた機能の1つだ。
強いて欠点を挙げれば既定値が無効な点。Microsoftとしては、先に述べたオンラインソフトなどとの衝突を避けるため、無効を選択したと思われる。なお、複数台のPCを使用せずとも、過去のクリップボードを参照し、必要であればピン留めして履歴から削除されることを避けられるので、万人にメリットがある機能と評価していいだろう。
さらに述べれば同期タイミングが不明確な点だろう。各クリップボードのタイル左下には同期したタイミングが記載されているが、クリップボードの同期はネットワークの状態や、バッテリー駆動時はいつまで経っても同期されない状態に何度か出くわした。
このあたりは同期を手動で実行するボタンを用意するなど、対処方法はいくらでもあるので、Microsoftには一考をうながしたい。なお、今回検証した環境には、いくらスイッチをオンに切り替えても、すぐにオフへ戻ってしまうPCがあった。このあたりは詳細が分かった時点で追ってご報告する。
好みが分かれるダークエクスプローラー
配色デザインの評価は人によって異なるが、エクスプローラーがダークモードに対応したのは正直意外だった。Win32コードからの脱却を進めたいMicrosoftだが、Windows 10以前との互換性を鑑みると、UWP版エクスプローラーのみに移行するのは時期尚早と考えるのも当たり前である。そのためMicrosoftは、OS側で供えていたダークモードへWin32版エクスプローラーを対応させたのだろう。
バージョン1903でもUWP版エクスプローラーの機能面に大きな変化は見られず、アプリモードの配色に追従するコードをWin32版エクスプローラーに移植したと思われる。その証左というほどではないが、「設定」でアプリモードの配色を変更すると、UWP版およびWin32版エクスプローラーの配色が同時に変化した。
既定機能に対する配色の変更は、それこそWindows 3.x時代までさかのぼり、ユーザーは自由に変更できた。だが、"ウィンドウ内の背景色は白色"という絶対領域があり、カスタマイズ好きのユーザーはExplorer.exe互換シェルを使ってあれこれと遊んだものである(若い方はAndroidのランチャーアプリを変更して、アイコンの動作や使用スタイルがカスタマイズできる状況を思い浮かべてほしい)。
Windows 8.x以降は、配色に関する設定は大きく制限され、Windows 10もバージョンを重ねることで、少しずつ自由度が広まりつつある。現在開発が進むWindows 10 Insider Previewにその片鱗は見えないものの、OS側で配色を制限することに意味はない。テーマ機能も復活していることを鑑みて、Microsoftには自由度を広げる改善を加えてほしい。