トータルとしては、いずれの撮影でもキットレンズのFE 28-70mm F3.5-5.6 OSSが見劣りし、それ以外の3製品の描写性能は拮抗しているといえます。

もっとも、FE 28-70mm F3.5-5.6 OSSも写りが悪いというほどではありません。私自身、ユーザーとして以前からこのレンズを所有していますが、解像力とボケの表現に物足りなさはあるものの、各種収差は目立たないように低減されており、ちょっとしたスナップ用途で画質に不満を感じることはありません。AFが軽快に作動することや、重量わずか295gという機動力の高さも魅力です。

では、仕事用に使いたいレンズはどれかと問われたら、私の場合、迷わずFE 24-105mm F4 G OSSを選びます。ズーム全域でのスキのない高画質に加え、幅広い焦点距離と優れた接写性能が非常に便利だからです。例えば、筆者がふだん行っている人物のインタビュー撮影やイベント取材といった用途では、このFE 24-105mm F4 G OSSをメインにして、望遠ズームや広角ズームと合わせて持っていきたいと思います。

一方で、休日の子どもスナップといったプライベート用途や、もっと自由に撮る作品用途では、FE 24-105mm F4 G OSSはあまり積極的には使いたくありません。便利で高画質な反面、面白みに欠けるからです。

使っていて面白いと感じるのは、F2.8通しの2本、つまり28-75mm F/2.8 Di III RXDと、FE 24-70mm F2.8 GMです。同じシーンを撮る場合でも、フルサイズの絞り値F2.8ならではのボケ表現力と、ボケによって生まれる奥行きや立体感をいったん味わってしまうと、F4以上の絞り値で撮る気にはなれません。

もちろんボケを重視するならば、今回取り上げたレンズとは別に、明るい単焦点レンズを用意するという選択肢もあります。ただ、単焦点のF1.2~1.8クラスではぼけすぎてしまって、ぼかすこと自体が目的のような本末転倒な写真になりがちです。そういう意味で、F2.8くらいのボケ具合が適量だと個人的には感じています。また、ボケを生かしながらズームができるという利便性も重要です。

  • α7 IIIに装着した状態。左上から時計回りに、ソニー「FE 24-105mm F4 G OSS」、ソニー「FE 24-70mm F2.8 GM」、タムロン「28-75mm F/2.8 Di III RXD」、ソニー「FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS」

それでは、28-75mm F/2.8 Di III RXDと、FE 24-70mm F2.8 GMの2本ならどちらを選ぶべきなのでしょうか? プロならばFE 24-70mm F2.8 GMといいたいところですが、この重いレンズを長時間持ち歩く体力は残念ながらありません。

理想は、スタジオ撮影など撮る場所と被写体が前もって決まっているケースではFE 24-70mm F2.8 GMを、歩きながら被写体を探すようなケースでは28-75mm F/2.8 Di III RXDを選ぶ、といった使い分けです。あるいは、身体を鍛えて体力をつけることでしょうか……。

以上の結論は、私の個人的な用途に合わせた使い方の一例です。各作例を参考にしながら、自分の用途に合ったレンズを見つけてみてください。