台本に書いてあるセリフの字面通りに演じてもつまらない

――そういったお話を伺うと、ドラマに出てくる「この国には二種類の人間しかいない。富める者と貧しき者ー」というモノローグひとつとってみても、古賀がどういう気持ちでこの言葉を発するのか、それを椎名さんがどう演じられるのか、とても興味深いです。

作品の面白さとか、脚本の質っていうことを考えると、役者って、台本に書いてあるセリフの字面通りの感情で、そのまま演じるだけじゃつまらないわけです。口ではこうは言ってるけど、本当はこの人物はこう考えてるんじゃないかなって思わせるような脚本じゃないと、演じていてもつまらないんですよ。相手はこう言ってるんだけど、本当はそれにはこういう意味も含まれてるんじゃないかな、とか考えながらね。

――深いですね。

もともと日本語にはそういう面白さもありますけど。例えば、好きなら「好きだよ」っていうのが相手に届くのか、「いや、お前なんか好きじゃないよ」っていう方が届くのか。どんな顔をして、どんなシチュエーションでそれを言うかとか、何をしながらその言葉を言うかとか、役を演じる上ではいろんなことが複合的な要素として入ってくるんです。

――確かに、日常の会話を考えると、人間って意外と複雑ですよね。

まさに、どんなセリフも古賀本人が本当にそう思って実感して言っているのか、「今の俺はそうは思わないんだけども、世の中っていうのは、そういう仕組みの中で進んでるんだよ」っていう現状を言っているのか、あるいはまた裏に違う何かがあるのか、それはわからないですよね。

――なるほど!

このドラマの脚本って、モノローグじゃないお芝居の部分にも、そういう伸びしろがたくさん隠されている脚本なんですよ。現場で脚本家の先生にお会いした時も、「本当に面白いです!」って申し上げたんだけど、きっと脚本を書くときにも、予めそういうことを念頭にしながら書いていらっしゃると思うんです。だから、僕らもそれをしっかりと読み取って、汲み上げた表現が出来なければいけないと思いますよね。まさにいま撮影現場で、日々そういった楽しみを味わいながら、スタッフ・共演者の皆さんと、完成に向けて頑張っております。

――宅麻伸さん、奥田瑛二さんとは今回初共演とのことですが、対峙してみていかがでしたか?

いやぁ、さすが先輩! といった感じでしたね。お二方とも面識はあったんですけれども、お芝居を直に見るのは初めてだったわけなんです。もちろん、映画やテレビを通しては観てますよ! 奥田さんは『棒の哀しみ』で賞を獲られていてすごく憧れましたし、宅麻さんはテレビドラマで活躍されている姿がすごく強く印象に残っていますし。芸能界の先輩でもある奥田さんと宅麻さんが、今回自分を支えてくれる関係性で一緒に居てくださったことで、素直に古賀の気持ちに近づける感じがありましたね。それぞれ何十年と活動されてきている方々なので、どこか互いにそれも見合って演じるというかね。こういう生き方をされている俳優さん、女優さんだというのを感じると、自分もそれに負けないように、それに応えられるように、懸命に向き合わないといけないな、という気持ちにさせられますよね。