――有料ネット配信サービスに加入し、PCやスマホ、テレビなどで気軽に映像作品を楽しめる環境がこの数年間で急激に広まったのも追い風になりましたね。特にAmazonプライム・ビデオは『アマゾンズ』をはじめ、国内オリジナルコンテンツの開拓に意欲的ですし。

ここ1年くらいで、ネット配信サービスというものが急速に広まってきた感覚が、確かにありますね。Season1をやっていたころはそれほどでもなかったのですが、本当に去年くらいからは配信で映画やドラマを観るのが、わりと日常化しているような気がします。

――ネット配信サービスの浸透に先がけて、TwitterやFacebookといったSNSが人々の日常に溶け込んでいる状況がありますが、『アマゾンズ』が毎週金曜日の夜から週1回配信されていたころ、出演者の方々も一般視聴者と同時に配信を観ていて、終了後に感想をつぶやいている、といった現象が多く見られました。こういうのは視聴者にとっても嬉しいことであり、『アマゾンズ』の視聴者獲得にもつながっていったのではないかと思われます。

配信中、私もTwitterをのぞいていましたが、『アマゾンズ』の出演者ってヘンなんですよ(笑)。金曜日の夜に新しいエピソードが配信開始したらすぐにみんなで観て、お客さん(視聴者)と一緒に作品の感想を言い合ったりしていますから。作品に対する愛着が強いゆえのことだと思っています。

――独自にPCやスマホから加入手続きをしないと観られないクローズドな有料ネット配信というメディアから、受け皿として非常にオープンな「映画」が作られるというケースは珍しいですね。

Season1のころは、映画と言われてもピンと来なかったのですが、ここ最近の急速な配信メディアの広まり方を見るにつけ、だんだん心境が変わってきたところがあります。映画のスピンオフでネット配信作品を作る、というのはこれまでの「平成ライダー」でもたくさんやってきましたが、映像屋としては逆のこともやってみたいという気になったんです。つまり、配信ファースト、配信作品が先にあって、これを劇場映画にして一般のお客さんに観てもらうというスタイルをやってみたかったんです。

――繰り返しになりますが、急速に普及したとはいえ、さまざまな理由からまだAmazonプライム・ビデオに加入しておらず、『アマゾンズ』の存在を知らないお客さんもたくさんいるのではないかと思いますが、今度の映画では、そういった層をAmazonプライム・ビデオに引き込もう(Season1、Season2に触れてもらおう)とする狙いもあったりしますか?

配信サービス一般の加入者は何を求めて加入したか、一部調査によれば、オリジナル番組ではなく、既存の映画やテレビドラマをお手軽な料金で、お手軽に観られるという部分にメリットを感じている方が多いそうなんです。でも、その状態だと今後、メディアとして広がっていかないように思います。既存のメディアと「中身」は一緒なわけですからね。そうすると、映像メディアとしては単に既存メディアの代替品にすぎなくなってしまうので、配信のオリジナルコンテンツの価値を底上げする、ということを今後やっていかなくてはなりません。

『アマゾンズ』に関してはSeason3を、という声も確かにあったけれど、あえてそれをせず映画として作ることにしました。もともと『アマゾンズ』はAmazonプライム・ビデオが元ですから、こういう作品が他の映画作品と横並びで存在することによって、お客さんの中で「配信作品」がランクアップするかな、という考えがありました。配信サービスというのは、既存の映画が気軽に観られるサービスというだけではないんですよ、こういったオリジナル映画作品にまで発展するんですよ、という部分をアピールして、Amazonプライム・ビデオのオリジナル作品に向ける目線が上がってもらいたい、みたいな思いがあります。