Amazonプライム・ビデオの配信ドラマとして2016年にスタートした『仮面ライダーアマゾンズ』(全13話)は、テレビ地上波にて現在放送中の『仮面ライダービルド』をはじめとする「仮面ライダーシリーズ」とは別の流れで、かつて第1作『仮面ライダー』(1971~1973年)や『仮面ライダーアマゾン』(1974年)が志向していた「怪奇アクションドラマ」を一歩進めたかのような凄絶なバイオレンス描写を打ち出して、多くの視聴者の度肝を抜いた。
人間社会に潜む危険な人工生命体「アマゾン」から人間を守るべく、水澤悠はアマゾンオメガに、鷹山仁はアマゾンアルファに変身する。自分を含め、この世に存在するすべてのアマゾンを消し去るのが目的の仁と、危害を加える意志のない者は人間でもアマゾンでも変わらず守るべきだと考える悠。両者は人間を捕食するアマゾンと戦う宿命を共に背負いながら、互いの考えや目的の違いによって、対立を免れることができない。
Season1の好評を受け、2017年には新キャラクターを加えたSeason2(全13話)も配信され、こちらもSeason1を上回るショッキングな映像表現によって、さらなる注目が集まった。『アマゾンズ』を愛するファンの熱意は全話配信が完了した後でも冷めることがなく、ついにスタッフ・キャスト・ファン待望の劇場版が製作される運びとなった。
『仮面ライダーアマゾンズ THE MOVIE 最後ノ審判』(5月19日公開)と題された映画では、Season2から2年後を舞台とし、悠と仁の争いに決着が着く「完結編」ということがファンの間で大きな話題を集めている。ここでは、『アマゾンズ』シリーズを完結させる映画『最後ノ審判』の上映にあたり、作品の生みの親にあたる東映プロデューサー・白倉伸一郎氏に、映画化に至る経緯から、作品の成立過程、そして仮面ライダー映画史上初の「4DX」「MX4D」という上映形態についての狙いなど、気になる疑問をぶつけた。
――まずは、映画化に至ったきっかけから教えてください。Season2のエンディング後に、神尾佑さん演じる橘局長がこの世に残った"アマゾン"を一体残らず殲滅することを宣言しますが、あの時点で「映画」につなげようとお考えだったのですか?
あの橘のくだりって、なんだか次に(作品を)やる伏線みたいに見えますが、台本上ではストーリーの合間に入っていたシーンなんですよ。しかし話の流れ的に「ここは不要だな」と思い、エンドロール後のエピローグに回したわけです。そうすると、いかにも東映がやりそうというか(笑)、「まだ続きがあるかも?」という風に見えるかな、という考えです。あのときは、映画のストーリーをどうするかまでは固まっていませんでした。
――企画そのものはすでに動き始めていた、ということはありませんか。2017年5月23日に渋谷LOFTで開催された白倉さんと小林靖子さんのトークイベント(白倉伸一郎プロデュース作品を振り返る/第1回)で、白倉さんが小林さんに「こんど別の企画があるから」と声をかけていたのが印象に残っていまして、これって『アマゾンズ』の映画化についてなのかなと……。
Season2が週1回配信の真っ最中でしたよね。あのとき、靖子にゃん(小林氏の愛称)を口説いていました。忙しい方なので、スケジュールをなんとか空けられないかと。渋谷LOFTで飲みながらトークして、したたかに酔っぱらったその後に、店を2軒ハシゴしながら懸命に(笑)。あの段階で、すでに映画をやろうという話が進んでいたのかもしれないですね。
――おそらくSeason1を始められた段階では、この後どう展開するかまでは予測ができなかったのではないかと思うのですが、『アマゾンズ』の作品に力があったため、どんどん企画が発展していったような印象ですね。白倉さんが『アマゾンズ』の人気に手ごたえを感じ始めたのは、どういったところからですか。
2016年11月22日に、中野サンプラザでキャストを集めてイベント『仮面ライダーアマゾンズスペシャルイベントA to M Open Your AMAZONS』を開催したときですかね。あそこに集まられた大勢のお客さんの謎の熱気(笑)がきっかけのひとつでもあります。あとは身内の話で申し訳ないのですが、社内での反響がすごくよかったんです。毎週の配信を追いかけている人が多く、映画部門から「この作品を映画にできないか」とか、Season2が終わった時点で「悠と仁との決着が着いていないから、ぜひ続きを」という声がひんぱんに聞こえてきました。「えっ、こんな人まで『アマゾンズ』観てくれていたの?」というような方がいたりして、東映社内での盛り上がりがあったというのはとても珍しいケースでした。映画をやることができたのは、社内も含めた周りからの熱気に押されたというのが大きいですね。