AMDはRaven Ridge、つまりRyzen APUベースのRyzen Proシリーズ 7製品を5月14日発表した。Santa Claraの同社オフィスで、新製品に関するブリーフィングが行われたので、その内容を紹介した。
本体に入る前の余談だが、AMDのシリコンバレーのオフィスといえば、AMD Placeが有名である。創業以来、47年にわたってここを本社としていたが、2016年に2マイルほど東に離れたSanta Claraに移転した。
新オフィスは101を挟んだ斜め向かいにIntel本社があるという、なかなか絶妙なロケーションに位置している。受付を入るとAMDロゴがお迎えしてくれる(Photo01)。ちなみにこの受付はプレスなど外部に向けたもので、脇には同社の製品を採用したプレイルームもあって(Photo02)、自由に遊ぶこともできる。新オフィスになって大きな変わったことといえば「ジェリー・サンダースの胸像がある」(Photo03)ことだそうだ(笑)。
さて、まずは同社の業績から。2017年4月25日に発表された第1四半期の決算報告によれば、第1四半期だけで16.5億ドルの売り上げを達成した。
粗利益は36%と一般的な半導体メーカーに比べればまだ低いレベルなものの、ここ数年の同社からすると考えられないほど高いレベルに達している。ラフにいえば同社の売り上げは現状50億ドルほどだが、製品ラインナップの充実によって750億ドルのTAMが見えてきたという(Photo04)。
そこまで行かないにしても、PCだけでも2020年の時点で300億ドルのTAMがあるので、まずはここに注力するという戦略は分かりやすい(Photo05)。経営状態に関して言えば、2016年度から2017年度で10億ドルの売り上げ増になっており(Photo06)、これはRyzen CPUによるものだ。製品の出荷数も2017年第4四半期から2017年第1四半期で倍増というすごいことになっているのだが(Photo07)、これは主にRyzen APUによるものだろう。
Photo08は簡単な売り上げ分析であるが、Bristol Ridgeベースの売り上げは次第に下がってきており、これをRyzen系で埋めて更に引き上げているのだが、2018年にはRyzenだけでさらに10億ドルの売り上げの上乗せを計画している(Photo08)。これをどう実現するのかというと、Ryzen Proの出荷量を大幅に増やしたいというのが同社の考えだ(Photo09)。
Ryzen APUでビジネスPCを狙う
Business向けの場合、価格/性能比ではなく絶対的な価格が要件として厳しく求められる。大企業や政府機関の場合、一度に数千台とか数万台を導入する事も珍しくない。すると単価が1万違うだけで、導入の際の価格差が1千万とか1億になるためだ。
このマーケットでRyzen Proは非常に厳しい戦いを強いられてきていた。この理由は簡単で、GPUを統合していないので、どうしてもDiscrete GPUを別に用意する必要があったから。CPUが安くても、実際にはDiscrete GPUの価格分の上乗せがある。加えていえばDiscrete GPUを搭載するとなると当然ケースも大型化するし、設置面積も増える。Business向けの導入にはハンデとなるのは明白である。
日本に限らず海外でも、Business向けに広くノートが使われているわけだが、薄型モデルや2in1が広く使われているところに、ゲーミングノートクラスの筐体が求められるRyzen Pro+Discrete GPUという構成は難しい。
結局、Discrete GPUの搭載が前提となるようなタワー型デスクトップを中心にRyzen Proが採用されてはいるものの、残りのマーケットは競争力の劣るBristol Ridgeベースで戦うしかなかった。今回はGPUを統合したRyzen APUでここを取りに行こうというわけだ。