20億人を超えるユーザーを誇る世界最大のSNS、Facebookが揺れている。性格診断アプリから得られた合計8,700万人ものユーザーのプライバシーデータがCambridge Analyticaに売却され、2016年トランプ大統領の選挙キャンペーンに活用されていたことが明らかになったからだ。

この事実は、米国の政治の中枢にいる議員たちを焦らせた。CEOを務めるマーク・ザッカーバーグ氏を議会の委員会で行われる公聴会で2日間、実に10時間にわたって質問攻めをし、いったい何が起きたのかを明らかにしようとしたのだ。

筆者は、テレビやラジオなどで生中継される公聴会の模様をほぼ全てリアルタイムで聴いた。その中ではザッカーバーグ氏自身の情報も、選挙キャンペーンのために売られていたことが分かり、Facebookが今後も無料でサービスを提供し、広告モデルを維持することなどが明らかになった。

一方で、質問をした100名近くの上院・下院の議員は、Facebookやインターネットビジネスについて、さほど深い知識があるわけではなく、Facebookの存在理由やどんなビジネスモデルをとっているのかといった基本的な質問が数多く見られた。

そして肝心の、Facebookが集めている個人情報という、最も明らかにすべき情報を引き出すことはできなかった、と見ている。言い方は悪いが、マーク・ザッカーバーグ氏は100人の不勉強で分からず屋の詰問に10時間も付き合わされた。ただそのこともマーケットに伝わり、問題発覚の3月中旬から大幅に下落してきたFacebook株は、公聴会が進めば進むほど買い戻されていった。決してFacebookの勝利ではなく、これからすべきことはたくさんあることには間違いないが。

その中で筆者が最も印象に残ったやりとりは、「あなたにとって最も深い後悔は?」という質問だった。

これに対してザッカーバーグ氏は「2016年の選挙の際、(フェイクニュースなどによって)ロシアが関与してきたことを察するのに遅れたこと」と答えている。皮肉だったのは、トランプ氏の保護主義的、米国第一主義の思想から最も遠いところにあるシリコンバレー企業が、そのトランプ大統領を生み出すことを手助けしていた、という構造にある。