今回のアプリのテストには、Squaw Valleyのアンバサダーで長野五輪のモーグル金メダリスト、Jonny Moseley氏も参加し、その機能を試した。Moseley氏はこんなコメントを残している。

「Apple Watchによる1本ずつの滑走の詳細を記録する機能は、アスリートのトレーニングからスキーやスノーボードを楽しみたい人まで、誰にとっても素晴らしいものになります。Squaw Alpineアプリは、はぐれた子どもを見つけるだけでなく、パフォーマンスを比較することもできます」

Squaw Valleyは北米に12のスノーリゾートがあり、活用状況を見ながら対応するリゾートを拡大させていく事を検討しているという。Apple Watchと新しいスキーワークアウトのAPIをきっかけに、デジタルによるリゾート活性化の戦略を進めていくことになりそうだ。

このデジタルによるスノースポーツのサポートというアイディアを、日本のスキー場は真っ先に取り入れるべきだと筆者は考える。

日本のスキー・スノーボード人口は1998年の1,800万人から2016年には700万人を切る水準にまで減少している(公益社団法人日本生産性本部「レジャー白書2017」)。スノーボード人口は300万人と安定しているが、ここ20年間スキー人口の落ち込みが著しく、客の呼び戻しに失敗してきた。

現在は中国や豪州などからのインバウンドも伸びているが、なおさら世界中のリゾートとの間での厳しい競争に直面することになる。より多くの人に楽しみを提供し、他のレジャーや他のリゾートとの差別化を図る上で、Apple Watchの活用によるホスピタリティ向上は、リピーターの増加やゲレンデでのコミュニティ醸成など、様々な価値をもたらしてくれるのではないだろうか。

松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura