今回の取り組みのなかでも注目されるのは、教職員の働き方改革である。これまでほとんど手つかずだった教職員の仕事のやり方にメスを入れる取り組みともいえよう。

■多久市教育委員会の田原優子教育長:「思い切った方針を出さなくては、教員の多忙化は、いつまでも続くことになると考えている。一般企業は、スクラップ&ビルドであるが、教育分野はビルド&ビルド&ビルドであり、仕事が増えるばかりだ。本当にその仕事は必要なのかといったといったことも検証しなくてはならない。

まずは、教員が意識を変えていくことが大切であり、それによって残業を減らす取り組みが加速することになる。クラウドを活用することで、意識改革を促進することから始めていきたい。

毎月80時間以上の残業をしている教員が40%以上を占めている。2018年度には、これをゼロにし、さらに授業だけでなく、部活動の取り組み方からも変革を進めることで、2年目以降には、一層の残業時間削減を進めていくことになる」

  • 佐賀県多久市の学び方改革、教職員の働き方改革

    現代的かつ将来を見据えた新しい学びのスタイルとともに、先生たちが抱える大きな負担、超時間労働を改革していく

多久市では、教職員に対しては約190台のWindows 10搭載PCを整備し、文書のデジタル化や情報共有を推進。印刷文書の削減や、授業コンテンツの共有、テレワークの運用開始などにより、教務および校務の効率化と時間外労働の縮減を図ることで、働き方改革を推進する考えだ。

校務用セキュリティクラウドでは、校務クラウド認証基盤を活用し、自宅などから利用する際には、文書のカットやペースト、ファイルのコピーなどを一切禁止しており、さらに第三者の端末からのアクセスを排除する仕組みを採用している。自宅では、校務用仮想PCの画面を遠隔操作する形で、セキュアな環境を実現するという。

具体的な事例として、教員がインフルエンザにかかるなど病欠した場合や、天候が悪化して休校になった場合に、自宅から作業を行ったり、子供の様子を確認したりといったことができる。ほか、クラウド上に蓄積した教材などのコンテンツを教員同士が共有することで、教材の製作にかかる時間を削減するといった活用も可能だ。

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    教員が使用するタブレットに表示されるトップページ。教員ごとにファイルが用意されている

■日本マイクロソフトの佐藤執行役員常務:「残業が当たり前であり、生産性が低い『昭和の職員室』を、働き方で改革をする『平成の職員室』に変えていきたい。

Microsoft 365 Educationを活用することで、情報共有の迅速にしたり、印刷資料を配布する手間を削減したりといった、時短、効率化、見える化によって時間を創出できる。また、会議時間の短縮、欠席した会議の情報共有を効率化、教職員同士のコミュニケーション強化によって、創出した時間を新たなスキル蓄積などに使える。仕事を多様化でき、残業の削減にもつなげられる。将来的には、業務の効率化、時間創出で休みやすい環境を作りたい」

■多久市教育委員会の田原教育長:「2018年4月以降、教員が自宅にデバイスを持ち帰ることを認めたり、家庭内のネットワークに接続することを認めたりといった制度を導入する方向での検討を開始している。1台のノートPCを、職員室や教室、自宅から使えるようになる。成績の評価作業なども、セキュアなクラウド環境を実現することで、自宅で行える。

教材の共有については、これまでにも使おうと思えば使えたが、それぞれに手持ちのデバイスがなかった。さらにクラウド化することで、自分の手持ちPCにコンテンツなどを残すことがなく、セキュリティが強化されることで利用が促進されると考えている。子供たちの個人情報にも配慮ができる」

佐賀県多久市の学び方改革、教職員の働き方改革

東原庠舎中央校の古川能正教諭

■東原庠舎中央校の古川能正教諭:「台形を切って長方形を作るといった算数の教材を使用する場合、子供が失敗したときを想定して、紙では大量に教材を作っておく必要があったが、デジタルコンテンツを利用すれば、こうした手間がいらない。

この部分だけを捉えれば、教材準備にかかる時間は3分の1程度にまで短縮できるだろう。その分、子供たちと接する時間に割けるメリットは大きい。

だが、教材のシェアと活用で労力は減らせるが、クラウドに蓄積された資料を使用する場合にも、独自の改良を加えるといったことが教員ごとにある。コンテンツを広く蓄積していくことも必要だろう」

■多久市教育委員会の田原教育長:「従来は、自宅で仕事をするとなると、重たい荷物を持ち運び、残業仕事を家に持って帰るというものだったが、効率的なテレワーク環境を用意することで、校務の仕方が変わる。教員の意識を改革することが大切。

教員は、目の前の仕事に追われていることが多いが、校務を効率化することで、残業時間を減らし、子供と触れあう時間を増やせる。ゆっくりと睡眠を取り、教職員のメンタルダウンを回避したり、子供の身近なモデルになれる大人としての役割も果たしてもらいたい」