―― ソニーは、2018年3月期に、営業利益で過去最高となる6,300億円の目標を掲げているが、手応えはどうか。

平井氏:課題をあげるとすれば、ソニーピクチャーズエンターテインメントのビジネスを確実にターンアラウンドすることが重要。

幸いにして2017年は、『スパイダーマン:ホームカミング』、『The Emoji Movie』、『ベイビー・ドライバー』、『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』、『ブレードランナー2049』といったいいタイトルがそろった。以降もヒットタイトルを継続できるかどうかを見極める必要がある。またスマホについては先に触れたように、いかにコストを下げて、収益性をあげていくのかが課題だ。

それ以上に、私の視点から課題になりうるのは、まだ年度が終わっているわけではないのに、社内が何となく「ビクトリーラップ」状態になっているような感じがしている点だ(注:記者から思わず笑いが出る)。みなさんお笑いになるが、ここまでがんばってきた私を含めた経営陣や社員が、気を緩めることが最大の課題。これが正直な気持ち。

私は、社内のコミュニケーションの場で常々、「まだ第1四半期しか終わっていない」、「第2四半期にきたところ」だと語り、危機感を持ってやらないといけないと訴えてきた。苦しかった3年前、4年前、5年前を思い出してほしい。危機感を持たないと、あの苦しかった時期に逆戻りすると言い続けてきた。

2018年3月期の営業利益は、前年と比べて3,400億円ほど上昇するが、熊本地震による一時費用の影響を除くと、1,200億円程度の上昇である。しかも、そのうちの半分が為替による上昇。為替を除いた本当の実力では650億円の増加でしかない。そうしたこともしっかりと社員に伝えている。素晴らしい業績のように見えるが、実は内容は違う。だから、もっとがんばる必要があるということを伝えている。それをいま意識して伝えている。

ことあるごとに若手の社員とおやつを食べながら1時間議論をする場を設けているのだが、若い社員も危機感を持って仕事をしてくれている。ビクトリーラップの状況はなんとしても避けたい。

  • ソニー、Smart Home

―― ただ、2017年の年末商戦を順調に超えたことで、2017年度の営業利益目標である6,300億円に対する手応え感はかなり強まったのではないか。

平井氏:2017年の年末商戦は、テレビ、オーディオ、デジタルイメージングも好調であり、いい手応えがあった。プレイステーション4は、これまでに7,360万台以上を出荷し、プレイステーションVRも200万台を突破した。プレイステーションネットワークの成長も堅調である。

カメラのα9α7R IIIも貢献し、カメラ用レンズ群の一部では商品の供給が若干遅れるといったこともあったが、ここでも手応えがある。2017年の年末商戦は、かなり好調な実績で終えることができた。

ただ、コンシューマービジネスは、第4四半期には、在庫調整など様々な要素が絡む。6,300億円の達成に向けては、年末商戦の結果に加えて、それ以降の在庫コントロールをどうするのかということが重要になる。

社内でうまくコントロールしても、市場在庫の調整がどう行われるのか、あるいは行わないで済むのかといったことが影響する。3月31日まで緊張感を持ってあたってもらいたいというのが、社員へのメッセージ。たとえ6,300億円といういい数字を達成したとしても、4月1日からはゼロリセットで、さらに同じ利益水準を目指してやっていく必要がある。常に緊張感を持って経営にあたり、社員全員でがんばらなくてはいけないと思っている。