―― 今後の8Kテレビの方向性についてはどう考えているか。

平井氏:コンシューマー市場に対しては、4Kがいよいよ定着してきた段階である。お客さまに対して8Kコンテンツを届ける方法が難しいなかで、急に8Kのテレビをメッセージングするのは時期が早いと考えおり、まずは「4KプラスHDR」こそが、いまのメッセージであると考えている。

4KのHDRで画質をもっと追求できる。今回のCESで技術展示したX1 Ultimateでは、最上位の活用方法として8Kをお見せしたが、これはすぐに商品化するものではなく、いまの技術でここまでできるという技術の優位性を見ていただいたに過ぎない。

  • ソニー、平井一夫氏

平井氏:私は、4Kテレビは、これから伸びると考えており、これは他社も共通の考え方ではないだろうか。8Kがこれからの主流だというような、あえて混乱するようなメッセージを出す必要もないだろう。次々と技術を訴えても、ユーザーにとってベネフィットがなく、メーカーにとってもプラスに働くものではない。

ソニー、BRAVIA

8Kが本格化する時期については、なかなか明確にはいえない。8Kで撮影したコンテンツも増やさなくてはならないし、チップセットの性能もあげていく必要がある。また、8Kコンテンツをどう配信するのかという点も課題。

ただ、コンテンツを制作する側は、8Kでコンテンツを作っておくという準備ができる。実際にユーザーに届ける際には、HDや4Kで配信し、将来的に8Kが本格化したとき、8Kで届けるような準備だ。

かつてのアナログ時代に、ハイビジョンで撮影したコンテンツを4:3のアナログ放送で配信していた時期があった。こうしたコンテンツがハイビジョン時代にも視聴できるようになった。制作する側は新たな技術を先取りするべきであり、ユーザーにどういう形で届けるのかは別の問題である。

―― ソニーは高級オーディオの市場をどう考えているか。

平井氏:高級オーディオ市場そのものは小さいが、重要な市場だと考えている。スピーカーでは、SS-AR1という商品を出していて、頻繁なモデルチェンジはしないが、マイナーな改善を進めている。

高級オーディオはいいと思ったらじっくりと売るという方針を持っており、そうしなければ、オーディオマニアの信頼を勝ち取ることはできない。商品が古いといわれることもあるが、安定した形で販売していくことが必要。腰を据えて、いいものを届けることにウエイトをおいて商品開発をしている。

―― コンシューマーエレクトロニクス領域への投資はどう考えているか。一方で、BtoBビジネスをどうしていくのか。

平井氏:コンシューマー領域においては、あまり大型の投資案件は出てこないと考えている。かつては、液晶パネルに対して大規模な投資が必要だった時期もあるが、いまはそのビジネスはやっていない。

もはやパネルはコモディティ化しているので、テレビビジネスでの投資は、X1 Ultimateのようなパネルを駆動するチップセットに振り向け、ここで差異化しようと考えている。この部分は、投資を積極化したとしても、パネル製造とはまったく異なる投資規模に収めることができる。

デジタルイメージングについては、レンズ部門を大きく伸ばしていくことに投資をしていくが、これもそれほど大きな投資金額ではない。そのなかで、大きな投資額が必要になるのが半導体である。ここは数千億円規模の投資をしないと、キャパシティの増強などができない。成長ドライバーであるので、需要に見合った供給ができるように投資をしていく。

今後、BtoBのビジネス比率が若干上昇する傾向はあるだろうが、コンシューマーエレクトロニクスの領域を意図的に縮小して、BtoBに積極的に振っていくという考えはない。

ソニーのエレクトロニクス事業において、BtoBは半導体や放送局向け映像システムなどがあり、これはこれで重要なビジネス。だが、ソニーという会社は、お客さまに直接お届けするコンシューマー製品をいかに強くしていくかがDNAであり、一番得意としているところである。これからも積極的に投資をしていかなくてはならない。日本の大手電機メーカーはBtoBを積極化させているが、ソニーはコンシューマービジネスを大事にしていく。これは私の強い意志である。