―― 音声アシスタントについて、ソニーはどう活用していくのか。
平井氏:音声アシスタントは、大変素晴らしい機能である。だが、それが一人歩きをしても仕方がない。高画質テレビや高音質AIスピーカーといったように、商品として「立った」ものを作れるかどうかが大切。
テレビとスピーカーをネットワークでつないだ連係機能などを通じて、商品の基本性能を追求することで、ソニーらしさにつながり、さらに充実した音声アシスタント機能によるユーザー体験を提供できると考えている。商品としての強みを徹底して追求する必要がある。
―― ソニーは、Googleとの連携が強いが。
平井氏:いまのところはGoogleを中心にしているが、決して、Googleだけとしかやらないというわけではない。様々な企業と様々な話をしていきたいし、それらのなかから、パートナーシップを組む可能性も出てくる。
―― 音声アシスタント技術やAIについては、ソニーは、独自技術も活用しているが、そのあたりの棲み分けはどうするのか。
平井氏:それぞれの製品が、どの製品と、どうつながるかを前提とし、ベストな技術を使っていきたいと考えている。AIは、Google Assistantの拡張機能のひとつ。テレビやスピーカーといった様々な製品をつなぎ、利用することを得意としており、この分野では、Google Assistantの技術を使っていくことになる。
一方で、aiboはスタンドアロンに近いところがあるため、ソニー社内の技術を使っていく。用途と商品の特性、どう横展開をするかということを考えて、総合的に判断をしている。以前のソニーは、何でも自前でやるということが前提となっていたが、いまは、そういう時代ではない。自前のものもあるし、自前ではないものも使ってもいい。社内もオープンマインドになってきている。
―― オーディオビジュアルにおけるAIの活用はどう考えているか。
平井氏:オーディオ部分でのAI活用では、ユーザーが新たな音楽を簡単に発見して楽しんでもらうなど、巡り合わせのヒット率を高めることがひとつの用途となる。オンラインサービス各社もそれに力を入れているが、ソニーは、ローカルに入っているコンテンツについても、うまく巡り合わせを支援できればいいと考えている。ヘッドフォンをはじめとするオーディオ機能の向上は常に考えており、追求していく必要がある。
MDR-1000Xシリーズのノイズキャンセリングの機能は昨年(2017年)からやっているが、この機能に加えて、あえて外の音を聞こえるようにするとか、外の人間の声だけは聞き取れるようにするといった、逆転した発想の実現などにもAIを活用できる。ユーザビリティがあがるといった点での使い方を追求したい。いまは簡単なアプリケーションに過ぎないが、これを発展させることを視野に入れたい。
また、こうしたユーザビリティの向上だけでなく、音作りや画作りという点でもAIは活用できると考えている。AIを使って、より赤の色を鮮明にするとか、20,000Hzの帯域をあげるといったこともできるだろう。