米ラスベガスで開催されたCES 2018の会期中、ソニーの平井一夫社長は共同インタビューに応じ、「ソニーは、お客さまに直接お届けするコンシューマー製品をいかに強くしていくかがDNAであり、一番得意としているところ。これからも積極的に投資をしていかなくてはならない」などと発言。コンシューマービジネスを成長の柱に据える姿勢を改めて強調した。

2018年3月期には、過去最高となる営業利益6300億円を掲げており、達成に向けて手応えを感じながらも、社内において「ビクトリーラップ」の状態になっていることを指摘。「私を含めた経営陣や社員が、気を緩めることが最大の課題である」と手綱を締めた。

  • ソニー、平井一夫氏

    CES 2018のソニー発表会から

―― 今年のCES 2018を見て、どう感じたか。

平井氏:CESを主催している団体の名称が、CEA(コンシューマー・エレクトロニクス・アソシエイション)から、CTA(コンシューマー・テクノロジー・アソシエイション)に変わったように、主催者自らが、エレクトロニクスではなく、テクノロジーであるとい言っている。

ここ数年のCESでは、それを象徴するように、自動車メーカーなどが参加している。また、電機メーカー各社も以前は同じ方向を向いていたが、ソニーはソニー独自のやり方があり、他社には他社のやり方があるということが明確になり、向かっていく方向が少しずつ変わってきた。これは悪いことではない。

むしろ、自分たちが持っている資産をどう有効活用するかを徹底的に考えると、すべての企業が同じ方向に進むわけがない。例えばパナソニックは、バッテリーの領域でテスラと組んでがっちりやることを打ち出しているが、これはパナソニックらしいもので、それぞれに進むべき道が変わっていくのはいいこと。

いつの時代であっても、お客さまの一番近いところで、「これは素晴らしいね」と言ってもらえるようなデザイン、たたずまい、機能を持った商品をお届けするのが、ソニーのDNAであり、これは変わることがない。

―― CES 2018におけるソニーブースのポイントはどこか。

ソニー、平井一夫氏

ソニー 社長兼CEO 平井一夫氏

平井氏:今回のCESでは、コンシューマーエレクトロニクス領域のさらなるイノベーションの追求、新たな事業への挑戦という2点を軸にした。コンシューマーエレクトロニスの領域では、テレビは有機ELと液晶の新製品に加えて、高画質化において重要な役割を担う次世代の高画質プロセッサ「X1 Ultimate」を参考展示した。X1 Ultimateは、現行製品で好評のX1 Extremeに対して、2倍のリアルタイム画像処理能力を実現し、液晶と有機ELパネルの特徴を、最大限引き出すものになる。

さらに、スポーツシーンでも高音質で音楽に浸れるワイヤレスヘッドフォンの3機種や、最新の音声フォーマットであるDolby AtmosとDTS:Xに対応したサウンドバーも展示した。「KANDO(感動)@ラストワンインチ」を目指した高音質の音楽体験を届ける商品群であるLife Space UXのプロジェクター製品も新たに紹介した。

新たな事業としては、2つ観点から訴求している。ひとつは、人間の目を超えるセンシング能力を持つソニーの高性能なイメージセンサー。クルマの目として高度な完全自動運転社会の実現に貢献したいと考えている。

もうひとつは「AI×ロボティクス」だ。センサーとメカトロニクス技術を、人工知能、ロボティクス、通信などと組み合わせて、エレクトロニクスを広げる新たな提案のひとつとして、海外では初めてaiboを紹介した。

「AI×ロボティクス」については、商品やサービスを通じて、人々の好奇心を刺激する体験を創出。また、業界活動を通じて、社会の発展に貢献することを目指して、取り組みを積極化していく。車載イメージセンサーや「AI×ロボティクス」は、より長いスパンでの当社製品の成長に向けた新規ビジネスとなる。

コンシューマーエレクトロニクス事業は、業績面では苦しい時期もあったが、現在は当社の足もとの業績を下支えする安定感が戻ってきた。CESで発表した製品についても、全世界のお客さまに対して魅力が伝わるように、各地での販売に努める。