Appleにとって大きな収益源へと成長したApp Store。アプリ開発者とともに構成するエコシステムを大切にしているのは、Apple自身が、最新のiOSとAPI、フレームワークを活用する実践の場を、アプリ開発者にほぼまるごと委ねているからだ。

Appleは毎年6月に世界開発者会議を開催し、開発者に対して最新のiOSを発表し、正式リリースまでの約3カ月の間、アプリの開発に取り組んでもらう。例年9月上旬に新型iPhoneが発表され、9月後半に発売されるが、そのタイミングで最新iOSがリリースとなり、対応アプリの配信もスタートする。

このサイクルが重要な理由は、最新のiPhoneの性能を最大限に引き出すアプリを、開発者に用意してもらうことができるからだ。開発者からすれば、最新のiPhoneやiOSに対応するアプリは世界中からいち早く注目を集め、彼ら自身のビジネス拡大に繋がる。

その点で言えば、2017年モデルのiPhoneは開発者にとって難しい課題だったかもしれない。iOS 11で強調しているのは拡張現実と機械学習だったからだ。

前者はiPhoneのカメラを使って現実空間に何かを浮かび上がらせるという、とてもわかりやすい進化を示すことができるとはいえ、ゲームアプリやなんらかのシミュレーションを行ったりするアプリにとってはともかく、それら以外のアプリでの活用イメージはすぐには湧きにくい。

機械学習では、開発者は立派なクラウドサーバを用意しなくても、各ユーザーのiPhoneの中で学習モデルを活用することができるのであるが、その学習モデルを用意したり、これをどう既存のアプリに生かすか、という課題が生じる。もし導入されても、ユーザーに「賢いかも」とはっきり体感してもらうまでには時間がかかるだろう。ユーザーに対し進化を理解させるのが難しい側面があったともいえる。