日本全国2万台に向けて
ドコモ・バイクシェアにとってはまさに追い風が吹いている状態。今後も事業は拡大できるというのが、目下の見方だ。堀社長は「(ロールモデルとなる)ニューヨークや欧州の事例を見ると1万数千台から2万台程度のスケールで展開している。我々もそのくらいのスケールにならないとダメだと思っている。会社の目標として設定した数値ではないが、規模感として(2020年までに)今の4倍、日本全国で2万台規模にしたいという思いはある」とする。
理想の実現に向けてまい進し、ビジネスを拡大したいところだが、そう単純にはいかないのがこの事業だ。ドコモ・バイクシェアでは、自転車の提供とサーバの貸し出しを行う月額制の「システム提供」といったビジネスも行なっているが、自転車の台数やポート設置数といった数から見れば、受託がドコモ・バイクシェアのメイン事業となる。そして、この受託は収益ばかりを追求した運営が本質とはならない。
受託とは
受託は自治体の入札を通じて、自治体が複数の候補から最も最適な事業者を選定する仕組みだ。料金面、サービス面、アフターフォロー、会員管理、安全への配慮、運営に利用する自転車の仕様など様々な条件を候補者が提示し、自治体がふさわしい事業者を選ぶ。
受託によって、自転車費用を補助(自治体により補助額は異なる)してもらえたり、自治体所有地を駐輪ポートとして活用できたりするなどの大きなメリットがあるが、自治体の意向に沿う必要が出てくる。たとえば、「区民の生活における利便性向上のため」といった目標に向けて運営するといったことだ。
それを踏まえながら、駐輪ポートの確保や設置、自転車の増車やメンテナンスなどを行い、サービス提供をしていくのがドコモ・バイクシェアの役割となる。
シェアサイクルについて海外では街中に大量の自転車が溢れてしまったと報道されることがあるが、そうした状態は、日本では望まれない。かつて、数多くの自治体で何年にも渡り、駅前の放置自転車問題に取り組んできた経緯があるからだ。増車するにしても、街の景観を損ねずにバランスよく、いかに利便性を向上させていくかが、ドコモ・バイクシェアに問われていくだろう。