――3年後には、VRソリューション事業でどれぐらいのビジネス規模を想定していますか。

吉田氏:まずは、VRソリューションビジネスを行うための仕組みを作り、実績を積んでいくことが大切ですし、ソリューションビジネスというものは、10年の計で考えなくてはならないビジネスであるとも思っています。ソリューション事業で食いぶちを稼ぐという点では、しばらく時間がかかるでしょうね。

VAIOは、VR市場において、ハードウェアを自分たちで作っていくことは考えていません。各社からヘッドマウントディスプレイが次々と発表されていますが、VAIOがその市場に入って戦うという選択肢はありません。もちろんやって欲しいという声もあるのですが、経営判断として、そこに入っていくメリットはないと感じています。

――今後のVAIO全体の成長戦略をどう描いていますか。

吉田氏:ひとつは、PC市場における法人向けビジネスの強化を進めます。法人向けPC市場の需要は上向いていますし、2020年のWindows 7の延長サポート終了までは旺盛な買い替え需要が見込まれています。

しかし、法人向けPC市場におけるVAIOのシェアはまだまだ低い。裏を返せば、VAIOのPC事業が成長する余地は大きいともいえます。いまの2倍以上の売上げ規模を目指すこともできると考えています。

一方で、EMS事業については、いまは、開発や試作などの「点」としての案件が多いのですが、これを量産やサポートまでを含めた「線」としてのビジネスができるようになると、売上げや収益への貢献が生まれはじめます。こうしたところにより強く踏み出していきたいですね。そこに、新たな事業としてソリューション事業を組み合わせていきたい。

VAIOのEMS事業から生まれたVAIO製造のロボット・ガジェットたち

ただ、山登りには天候の変化がつきものですから、そのあたりもしっかりとみていかないといけないですね。雨が降ったり、ヒョウが降ったりすることもありますから、そのときには雨宿りする必要もあります。

数字に追われるよりも、少数精鋭の体制を維持しながら、収益率を高めていくことが重要です。仮に、いまの10倍の規模になったとしても、先行するPCメーカーには勝てません。大切なのは、独自の技術を持ち、個性を出すということです。これがVAIOの生き方です。筋肉体質といわれる収益性を確保することを優先します。