Appleの屋台骨は引き続き、iPhoneの販売であり続ける。Apple Musicなどの購読制サービスやApp Storeでの販売手数料収入などは、iPhoneユーザーからの売上を獲得するための仕組みとなっている。
Apple WatchはiPhone向けのアクセサリであり、Apple TVも、iPhoneのアプリ体験をリビングルームに持ち込むコンセプトから、iPhoneのアクセサリの1つ、と考えることができる。
ただし、今回、この2つの製品は、それぞれ新たな可能性を切り拓いたり、用途を押し広げる独自進化の方向性を模索し始めている。
Apple Watch Series 3は、単体でのLTE通信をサポートし、iPhoneなしでの利用シーンを拡げた。単体での連続通話は1時間以上とかなり限られており、GPSとLTE通信を利用したワークアウトは4時間までしか利用できない。1日中、Apple Watchのみを身につけて過ごすのは、現実的ではない。
ただ、iPhoneに頼らずApple Watchが通信できるようになることは、我々も、iPhoneを置いて出かけたり、ワークアウトに勤しむチャンスが増えるであろうと予想される。iPhoneが登場して10年間、肌身離さず使う存在だったスマートフォンと我々との関係に、変化が及び始める、そんな一歩になると見ることができる。
またApple TV 4Kは、リビングルームでの4Kテレビの普及に合わせて、アプリも4K画質で楽しめる環境を整えることとなった。iPhoneのディスプレイは、4K画質には届いておらず、iPhone XのHDR再生対応が高画質対応の限界となっている。
高画質アプリというカテゴリが育つかどうかはまだ不透明だが、Apple TV 4Kというデバイスが、iOSプラットホームのグラフィックスの基準を高める役割を、今後担っていくことになるだろう。
松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura