大阪府堺のシャープ本社

シャープが大日の丸連合を形成するには、JDIが指す"グローバルパートナー"に名乗りを上げることが前提となる。桶谷氏は、「液晶パネルの協業については、独禁法の問題もあり、難しいと考えている。だが、有機ELパネルや将来のパネル技術についての協業は可能であろう」とする。

有機ELには、「蒸着方式」と「印刷方式」という2つの製造方法があり、JDI本体では蒸着方式の事業化に取り組んでおり、JDIが出資するJOLEDでは印刷方式の研究開発を進めている。

一般的に蒸着方式は小型化に適しており、スマホ用途などが中心。そして、印刷方式はPCやタブレットといった中型サイズでの用途が見込まれる。JDIはいずれも、2019年度からの量産を目指す計画だ。シャープは、蒸着方式と印刷方式の両方で研究開発を進めており、ここでも連携が図れると考えている。

またJDIにとっては、シャープの生産設備を活用することでパネルの量産化に弾みがつくほか、シャープの知財・人材の活用などのメリットが生まれることになる。韓国メーカーに比べて、人材面での不足が顕著な日本のメーカーの技術者を増やすことにもつながるというわけだ。

そして、亀山工場や堺ディスプレイプロダクトなど、シャープおよび鴻海グループの生産拠点も活用できる。JDIとシャープが組むメリットは大きいといえるだろう。また、両社が保有するディスプレイ技術に関する知財においても、補完関係にあるという。さらには鴻海グループを活用した最終製品としての「出口」も確保しやすい。ディスプレイの消費が安定化するメリットは、パネルメーカーには計り知れない。

桶谷氏は最後に、「出資の検討や、将来的には事業統合を視野に入れた話し合いも可能だと考えている。協業や出資、事業統合においては、シャープが主導権を握らなくてもいいと考えている」と語る。JDIにはいくつかの選択肢があるが、中国企業との話し合いが急ピッチで進んでいるとの声が関係者周辺から上がる。

ただ、「大日の丸連合」の形成を選択する道もあることを忘れてはならない。一度はとん挫した「大日の丸連合」がいよいよ誕生することになるか。答えは、JDIの選択次第である。