鴻海傘下のシャープが「大日の丸連合」を語れる理由とは
だが、そう語るシャープ自身も、すでに台湾の鴻海傘下にある企業だ。その立場をどう捉えているのか。桶谷氏は次のように語る。
「確かに2016年8月以降、シャープは鴻海傘下で再建を進めてきた。だがシャープは、独立した企業としての経営を維持している。鴻海からの技術流入はあっても、ディスプレイ技術は一切流出していない」
例えば、鴻海グループには、液晶パネルの開発、生産を行うイノラックス社がある。だが同社は、普及領域の液晶パネル生産が中心で、付加価値製品が中心となるシャープとは生産品目に差があるという。
「イノラックスとシャープは、技術面での協業をしていない。また戴社長(=代表取締役社長 戴 正呉氏)も、シャープのディスプレイ技術が、たとえ鴻海のグループ会社であっても流出しないような動きを徹底している」(桶谷氏)
もし、シャープの提携相手が競合する海外パネルメーカーであれば事業を一体化し、その結果として技術流出も想定された。しかし桶谷氏の話では、鴻海グループではそうしたことが起こらず、シャープの技術は社内に留まっているというのだ。
もちろん戴氏は、鴻海グループのナンバー2と言われ、鴻海の会長 郭 台銘氏の片腕だ。それだけに、郭氏がシャープのディスプレイ技術を鴻海グループのなかでもっと活用したいと言えば、技術流出も考えられないわけではないだろう。しかし、桶谷氏は「そうした動きに対しても戴社長は、かたくなに断る姿勢を持っている」と否定する。
郭氏に反論できる数少ない人物の一人が戴氏だというのは、多くの関係者が知る事実であり、実際、「私はシャープの社長であり、いまはシャープの社長としての仕事を最も重視している」と戴社長は周囲に漏らしているという。シャープに不利になるようなことはしないというのが、戴社長の基本姿勢だという。
そこに、シャープ自らが「我々は日本の会社だ」と言い張る理由がある。この姿勢が維持され続けるのであれば、そうした言い方もできるだろう。もちろん、手放しで日本企業と言えないのは明らかだ。ただ現状、技術流出の観点で見れば、それはないということだけは確かなようだ。