Apple TVそのものの進化については、前述のような4KやHDRなどの高画質化に加え、処理能力の向上によるARやVRといった新しい映像体験の実現、機械学習処理を活用したアプリの実行、より高度なグラフィックスを楽しめるゲームなどに対応する、リビングルームの主役を張れるような存在になることに期待している。
それ以上に、映像視聴の環境整備に関して、Appleがどのように取り組むのかは、Apple TVの主戦場とも言える米国市場における、重要な関心事だ。
ストリーミングサービスの間では動きもある。本連載でもご紹介したが、NetflixとDisneyの契約を2019年に修了し、Disneyが自社のコンテンツを配信するサービスを新たに用意するというものだ。
ユーザーは、無数に増え続ける映像配信アプリを個別に定期購読し、細かく管理しながらテレビを視聴することになる。これをもう少し円滑に、簡単に実現する仕組みが、Apple TVに求められる。ケーブルチャンネルがアプリ化されている場合、スポーツやニュース、映画、ドラマなどのアプリ購読のバンドルセットを用意したり、映像単位、週単位などのより柔軟な課金の仕組みを用意するなど、プラットホーム側の対応も重要だ。
AppleがiPhone発表のスペシャルイベントで新型Apple TVを披露するのか。またコンテンツ視聴体験に踏み込んだ、なんらかの施策を取るのか。はたまた、リビングルームでの体験を大きく変化させるサービスを用意しているのかどうか。主役ではないが、大きな変化を作り出す可能性を秘めた分野だけに、イベントでの発表内容を含め、注目していきたい。
松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura