Appleは第4世代のApple TVを披露する際、「テレビの未来はアプリだ」と語った。実際、動画配信プラットホームはスマホも含め、アプリを通じて映像が配信されており、ケーブルチャンネルの多くは独自のアプリを用意して、インターネットにつながっているスマホやタブレット、セットトップボックスなど、デバイスをまたいで映像を楽しめるよう準備してきた。
また、これまでとは異なるテレビの活用方法も実現している。例えばヨガなどのエクササイズのアプリをApple TVで実行すれば、リビングルームの大きな画面で、まるでスタジオでレッスンを受けているかのような体験ができる。しかも、アプリによっては、Apple Watchで取得した心拍数をテレビの画面に表示させ、エクササイズの効果をリアルタイムで分析する仕組みを備えているものもある。こうした体験は、Apple TVのアプリがもたらした、新しい楽しみ方といえる。
登場から2年経ち「テレビの未来はアプリだ」というコンセプトの一部は、顕在化しつつある。ただ、映像体験については、まだまだ未来を感じるに至っていない。
筆者は米国で、NetflixとHuluの購読契約をザッピングしながら映像を楽しんでいる。そのとき観たいコンテンツがあるサービスを契約し、見終わったら他のコンテンツを目当てに、サービスを切り替えるのだ。現状、Apple TVにはAmazon Primeビデオのアプリが配信されていないが、WWDC 2017でApple TV向けのアプリの配信がアナウンスされており、おそらく9月12日と目されるiPhone発表イベントで、Amazonアプリの配信に関しても触れられるのではないか、と期待している。昨今、特にAmazonとNetflixは独自制作のドラマや映画が数多くあり、中には日本のドラマやアニメ、バラエティ番組なども含まれている。米国で日本のコンテンツを楽しむのは、非常に限られた手段しかないが、その一翼を担う形となっているのだ。
アプリの購読契約の管理はApple TVから行うことができ、ケーブルテレビ会社に電話をかけて手続きをするよりもはるかに簡単だ。ただ、手続きが簡単になっただけで、いまいち未来の体験をしているという感覚に欠けるところがある。
そこではコンテンツの自由度や料金の問題などが大きく変わるような話にはなっていない。コンテンツホルダーやチャンネル側のビジネスモデルの転換を伴う話であり、Appleができることは少ない。環境こそ用意しているが、Appleが率先して、コンテンツの未来に関して活動してきたわけではなかったからだ。確かにテレビの未来は幾分かはアプリによってもたらされた。しかし映像コンテンツの未来が到来したわけではないのである。