Appleのスペシャルイベントの日程については、本原稿執筆時点では正式にアナウンスされているわけではない。ただ、日和やその内容については、これまで以上に多くの情報が流れており、2017年第3四半期決算の好調さもあって、Appleの株価は過去最高額の再更新をうかがうレベルに達している。

9月1日に配布された招待状

もちろん株価はその企業に対する成長期待の1つの指標であり、必ずしも将来の製品を反映するわけではない。また、企業そのものの業績以外の要素によって変動することもある。

足下では米国の政治不安、国内産業・雇用創出、中国との貿易摩擦の表面化、北朝鮮情勢の緊迫化、テキサス州での大規模なハリケーン被害など、直接的、間接的にAppleのビジネスに影響する要素が数多く存在している。

特に中国との貿易摩擦問題と北朝鮮問題は、iPhoneの製造や出荷に関わる問題である。米国最大規模のテクノロジー企業であり、世界的に著名な企業であるAppleの、世界が最も注目するiPhoneという製品は、「わかりやすい標的」となっているからだ。

例えばiPhoneは中国で生産されているが、米国が中国製の製品への関税を引き上げる場合、iPhoneはその直撃を受けることになる。また北朝鮮情勢が緊迫し、万が一朝鮮半島での有事が発生した場合、ディスプレイ、プロセッサ、メモリといった主要部品を韓国製に頼るiPhoneの生産に、必ず影響が及ぶことになる。いずれも、回避する方法をApple自身が持ち合わせているわけではない。

我々がiPhoneを楽しみにするのは良いが、製品が市場に並ぶのも、あくまで諸条件が安定した状態にあって初めてたらされるものであるということを、肝に銘じなければならない。

松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura