―― 過去40年間にわたって、PCメーカーであったAcerが目指す姿はなんですか。

チェン氏 : 「PCカンパニー」から、「データエコノミーカンパニー」への変革だといえます。これからAcerが目指すところは、データエコノミーカンパニーであるといっていただいて結構です。ただ、一瞬にしてデータエコノミーカンパニーに変わるのではなく、徐々にステップを踏みながら、データエコノミーカンパニーと呼ばれる会社へと変わっていくことになります。

―― その点では、PC事業は「A」ランクの事業であり続けるという認識でいいのでしょうか。

チェン氏 : もちろん、これまで長年やってきたPC事業は、我々にとってはAランクの事業であり、そこに蓄積されたノウハウや技術も重要なものばかりです。社内には素晴らしいデザインを実現するデザインハウスもありますし、生産性を追求するビジネスマンには最新技術を搭載した薄型ノートPCという選択肢を提供します。ゲーミングPCについても、エイサーの技術を活用することで、差別化できる重要な製品であるといます。ゲーミングPCには、高い性能や筐体のデザインからも、情熱や強いエネルギーというものを感じることができます。

こうした製品を作り出すことが、Acerそのものにも情熱やエネルギーを注入し、Acerが若さを持ったブランドであるという新たなイメージ作りにもつながると考えています。Acerは、2017年10月に開催されるPCゲーム「League of Legends」の決勝大会「World Championship」のスポンサーを務めており、日本でも、東京MXで放送中の番組「eスポーツMaX」をスポンサードしています。AcerのゲーミングPC「PREDATORシリーズ」が、eスポーツに積極的に関与していくことを示すと同時に、常にゲーマーの心の中心にいるブランドであることを狙った仕掛けのひとつです。

日本では、まだゲーミングPCの広がりが限定的ですが、あるタイミングから、日本においても一気に市場が拡大する可能性があると思っています。Acerは、これらのPCに関する資産を生かしながら、データエコノミーカンパニーへとステップを踏み、企業そのものを変革していくことになります。

Acerのゲーミングブランド「Predator」からは、多彩なゲーミングPCとゲーミングデバイスが発売されている。ゲーミングデスクトップPCは、本体デザインの評価も高い

そして、もうひとつお伝えしたい「小さなAランク」の製品があります。

―― それはなんですか。

チェン氏 : PAWBO+(パウボプラス)と呼ぶ製品です。いわゆるネットワークカメラでペットを見守るIoTデバイスで、外出先からも、ペットとコミュニケーションをとることができます。日本を含むいくつかの国では、将来、子供よりもペットの数が多くなるといわれており、大きなビジネスチャンスが生まれる市場でもあります。ペットを見守るという領域では、まだリーダーといる企業がありません。

Acerは、すでに1年前からこの分野に参入していますから、先行した強みを生かしたいですね。この分野では、またまだ収集されているデータの数も少ないですから、ここでもデータエコノミーカンパニーとしての切り口からの提案をしていきたいといます。

ペットの見守りをテーマにしたネットワークカメラ「パウボプラス」。専用のスマートフォンアプリケーションを使って、外出先から自宅のペットを見るだけでなく、マイクとスピーカーを利用して話をしたり、PAWBO+本体に収納した「おやつ」をあげたりできる。8月19には、耳型ライトを追加した「パウボ フラッシュ」も発売された

たとえば、PAWBO+で収集したデータをベースにして、ペットの睡眠時間を算出して、睡眠不足であることがわかれば、そのためになにをすればいいかといった提案を行えます。ペットフードの会社とデータを共有すれば、ペットにあわせて最適なペットフードを提案するといったことも可能になります。ペットフード会社との連動はすでに欧州で開始しています。これも、AをA+、A++へと引き上げていくための取り組みです。