ここで一つ問題となるのは、Appleはメモや、PagesなどのiWork製品の活用シーンについて、どこまでシビアなビジネスシーンを想定しているのか、という点です。
メモとPagesを比較してみると、確かに後者はシンプルでデザインもよく、仕上がりも良い、というちょうど良いところを狙ってくれます。しかしビジネスの現場でこれまで必要とされていた、あるいはMicrosoftが盛りこんできたマクロなどの機能が搭載されているわけではありません。
AppleのiOS標準アプリやiWorkは、個人のエンパワーメントにはなるが、ビジネス現場への細かいフィットを省いている、という印象があるように思います。
それが悪いわけではありません。例えばPowerPointよりもKeynoteの方が、スライドを読ませるのではなく自分の喋りを聞いてもらうプレゼンを作りやすいのは、アプリのシンプルな編集機能がそういうスタイルに向いているから、と筆者は感じています。
となると、個人がシンプルで快適に情報をとりまとめる先に、Appleはどんな仕事の風景を思い描いているのでしょうか。共有機能の進化は、より気軽にコラボレーションを行える仕組みが、シンプルな働き方にふさわしい、という考え方を示しているのでしょうか。
筆者はどうにも、まだ断片的なイメージや機能で止まっているように感じており、はやく全体像を見てみたい、と感じているのです。
松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura