高性能エンジンにこだわってきたBMWだが…
BMWは「駆けぬける歓び」を企業メッセージに、運転する喜びを追求してきたドイツメーカーだ。なかでも、BMWの直列6気筒エンジンと言えば、性能の高さと心地よい加速が評判で、クルマ愛好家も垂涎のガソリンエンジンである。時代と共に衝突安全性能の向上が求められたことから、メルセデス・ベンツは同じ6気筒でも全長を短くできるV型に変更したが、BMWはあくまで直列6気筒にこだわり、そのうえで安全性能を達成する努力を払ってきた。
あるいは、メルセデス・ベンツをはじめ、GM、フォード、トヨタ、日産自動車、ホンダが、水素を使う燃料電池車(FCV)を開発した際にも、BMWはエンジンで水素を燃焼させて走る技術開発にこだわった。
エンジンが第一の魅力であったBMWが、電動化へどう取り組むか。そこには戦略的な工夫が必要であったはずだ。
ミニはBMW電気自動車の原点
BMWは従来の開発とは別に、電動車両専門の開発チームを発足させ、「メガシティ・ビークル(Megacity Vehicle)」と称して小型の電気自動車(EV)をミニで試作し、世界中を試験走行する地道な取り組みから開発を始めた。そして、着実な開発から生まれたのがEVの「i3」である。また、PHVではスポーツカーの「i8」を誕生させた。
BMWといえば直列6気筒エンジンという印象が強いのを承知しているからこそ、BMWではなく「i」ブランドで、まずは電動化を立ち上げた。その上で、満を持してBMWのPHVの導入を開始した。これにミニも続いたわけである。いまやBMWは、電動車両の先駆的メーカーの1つと言えるようになった。
もちろん、ドイツの自動車メーカー各社も、フォルクスワーゲン「ゴルフ」、アウディ「A3」、メルセデス・ベンツ「Cクラス」および「Sクラス」にPHVを導入しているし、スウェーデンのボルボも「XC90」にPHVを車種追加して、それぞれ日本でも販売している。
日本では、三菱「i-MiEV」や日産「リーフ」が世界に先駆けてEV市場に参入し、三菱は前述の通りアウトランダーPHEVを手掛けている。
だが、いざ販売を開始してみると思わぬ障壁が立ちはだかったのである。