ただし、HomePodには64ビットのA8プロセッサが内蔵されている点を忘れてはならない。
A8の役割について、部屋の環境を認識し、音楽に応じた最適なサウンドを作る、と説明しているが、今でも現役として使うことができるiPhone 6を駆動させる汎用プロセッサである。今後、HomePodのソフトウェア更新によって、より多くの役割を担ったり、機械学習を駆使した音声アプリケーションを実行することができるようになっても、なんら不思議ではないのだ。
HomePodは当初、オーディオ機器として家の中に入り込む。しかし期待される未来は、家の中のハブとしての役割なのだ。
HomePodがAppleのHomeKitのハブとして、自身や他の部屋に置いてあるスピーカーのコントロール、照明、空調、セキュリティなどを管理する存在となっていくと同時に、家族のためのデバイス、という役割を担っていくことが考えられよう。
iOS 11では、家族の設定をより簡単にし、App Storeアカウントの共有だけでなく、iCloudストレージの共有やApple Musicのファミリープランのセットアップまでを一元的に管理することができる仕組みになるとみられる。
その中で、HomePodが家族のメンバーの在宅確認を行う存在となると、何が起きるだろうか。
例えば、家族向けのiMessageのグループチャットの内容を読み上げたり、家にいるメンバー宛のFaceTime Audioの着信や通話をHomePodで行うこともできるようになるだろう。
またiOS 11で追加されている機械学習フレームワークの自然言語処理の中には、話者認識の機能も備わっている。Google Homeで既に実現しているが、話しかけた人のスケジュールやリマインダーを返す、といった機能は近い将来実現されることになるだろう。
繰り返すが、HomePodにはA8プロセッサが備わっている。このことは、機械学習を生かした賢さを、通信を行わず迅速に処理して返してくれる機能を備えている事を意味するのだ。そのため、今現在はスピーカーだが、将来、非常に強力なホームアシスタントとしての存在感を示す可能性が高い、そんなデバイスと言えるだろう。
松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura