Appleは、ビジネスの窓口をアプリに設定したいと構想しつつ、iMessageを、個人間だけでなく個人とビジネスのつながりを作る窓口、連絡手段として捉えているところもある。電話の代替にしたい、と思っている節すらあるのだ。

現状、Apple IDに登録しなくても、電話番号でのiMessageは利用可能となっている。また中国では、電話番号でApple IDを作ることができるようにしている点も、iMessageを重要な連絡手段として活用しようとしている証拠と言える。

ただ、iMessageの大きな問題点は、Appleデバイスでしか利用できない点だ。iCloudアプリはWindowsにも用意されているし、Apple MusicはAndroid版もある。しかしまだ、Android向けのiMessageアプリは登場していない。

iMessageにビジネスチャットや個人間送金機能が搭載されていくと、やはりiMessageユーザーの数を拡大させなければならない局面へと進んでいくはずだ。そのときに、高付加価値ユーザーという「色」を意識したまま、Appleデバイスに閉じたプラットホームとして継続するのか、Android向けiMessageをリリースして「数」を取りに行くのか。

単純にコミュニケーションの面からすれば、相手が多い方が発展するプラットホームになり得るため、Android版のリリースを行った方がメリットが大きいと感じるのではあるが。

松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura