カメラを使ったショッピングアプリがARを活用して進化する例は、他にもありそうだ。家具でなくても、デスクの上の小物やフォトフレーム、絵画なども、ARで自分の部屋やデスクに合成することで雰囲気をつかむことができるようになる。
また、これはAR KitというよりはCoreML関連で用意された画像認識の機械学習の範疇となるように思えるが、鏡に映した自分をセルフィーし、オンラインショップの洋服に着せ替える、といったアプリも出てくるかもしれない。カメラのプレビュー画面を用いたAR、もしくはAR的な体験が、今後のスマートフォンアプリで重要になっていく、そんな未来のスマホの使い方を示すことにもなっていく。
また、スポーツアプリなどもAR Kitの範疇で開発が進むと思われる。
例えば、テーブルの上にサッカーグラウンドを再現し、実際に行われている試合を、リアルタイムに目の前でミニチュア再現する、といった楽しみ方もできるだろう。テレビカメラではなく、iPhoneのカメラでテーブルに近寄れば、ボールを持っている選手にクローズアップできるようになる。もちろん、それを配信する帯域の確保が大変そうではあるが。
AR Kitはあくまで、アプリを実現するための仕組みであって、そこで何をするかは開発者次第だ。おそらく近い将来、ARを生活に取り込む最適なアイディアが提出され、Appleはそれに最適な機能を、今後のAR Kitに追加していくことになるだろう。
松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura